1月13日、「香港危機に終わりはあるのか?」と題された東京外国語大のシンポジウムで講演する伊勢崎賢治氏(撮影/加藤夏子)
1月13日、「香港危機に終わりはあるのか?」と題された東京外国語大のシンポジウムで講演する伊勢崎賢治氏(撮影/加藤夏子)

シンポジウムにはインターネット中継で民主派学生リーダーの一人、周庭(アグネス・チョウ)氏も参加。「この運動をやめると香港は終わる」と危機を訴えたほか、日本の学生らの質問にも応じた(撮影/加藤夏子)
シンポジウムにはインターネット中継で民主派学生リーダーの一人、周庭(アグネス・チョウ)氏も参加。「この運動をやめると香港は終わる」と危機を訴えたほか、日本の学生らの質問にも応じた(撮影/加藤夏子)
会場には学生、社会人、研究者ら265人の聴衆が集まった(撮影/加藤夏子)
会場には学生、社会人、研究者ら265人の聴衆が集まった(撮影/加藤夏子)

■国際法の盲点をついた残酷な武力行使

 逃亡犯条例改正案を発端として、香港では7カ月以上にわたって大規模な抗議デモが続いている。民主派は普通選挙の導入や、警察の暴力に関する独立調査委員会の設置など「五大要求」を訴えているが、政府は一向に譲歩しない。中国政府の介入のもと、警察隊とデモ隊の衝突は激化し、多数の負傷者や死者を出している。

 香港政府によると、昨年6月にデモが本格化して以降、警察隊は1万6000発もの催涙弾を使用したという。皮膚疾患や呼吸器障害など、催涙弾による影響が疑われる健康被害を訴える市民の声も多い。また、8月11日には警察が発砲したビーンバッグ弾がデモ参加者の右目に命中し、重症に至った。年が明けても衝突は収まらず、元日にも主催者推計で103万人がデモに参加。警察隊は催涙弾や催涙スプレーを使い、排除に乗り出した。

 こうした香港警察による武力行使について「国際法の盲点をついている。(国際的に)戦争、内戦と見せない範囲でできる限り残酷なことをしている」と指摘するのは東京外国語大学総合国際学研究院の伊勢崎賢治教授。国連のPKO幹部として、東ティモールの選挙監視や、アフガニスタンをはじめとした紛争地での武装解除を請け負った経験をもつ“紛争解決人”だ。伊勢崎氏は今月13日に同大で行われた「香港危機に終わりはあるのか?」と題されたシンポジウムで、香港の現実について語った。

「人口約700万人のうち200万人が参加するデモが長期間続けばふつうは“内戦”と呼ぶ。しかし、非常事態宣言はされておらず、香港は“平時”。戦争状態ではないから国際司法は人道に対する罪として取り締まれない。その隙をついて、警察隊はノンリーサルウェポン(非致死性兵器)を使っています。半殺し兵器です。リーサルウェポンじゃないからいい、戦争兵器じゃないからいいというとそうではなくて、ノンリーサルウェポンは人間を確実にハンディキャップのある状態にするから残酷なんです」

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絶対に銃口を肩以上に上げてはいけない