「ゲリマンダー(特定の候補に有利になるような選挙区割り)や二重投票、三重投票しまくりのシステムです。投票所には武装警官もいた。監視団は(民主派の)若者の広大なネットワークを使って、選挙の通知が誰も住んでいないアパートにいっぱい届いたり、親中派にどんなおふれが回っているのかという不正の証拠集めをしました」

 選挙妨害や不正が横行し、親中派の勝利が予想されたが、結果は民主派の圧勝。全452議席の8割を超える385議席を獲得した。その背景には、71.23%にも上る高い投票率がある。これは中国返還後で最高だった4年前の前回を約24ポイントも上回る数字だ。

「ゲリマンダーや二重投票の問題も高投票率でのみ込んだ。しかし、今回は勝ったけども、投票率が下がったら次はどうなるか。そういうことも含めてすべて報告書に載せました」

■アメリカとは違う“日本版香港人権法”を

 アメリカでは、香港に高度の自治が認められる「一国二制度」が守られているか毎年検証することをアメリカ国務省に義務付ける香港人権・民主主義法が11月27日に成立。人権を侵した中国政府関係者らに制裁を科せるようにする内容だが、日本をはじめとする国際社会はそれとは違う方法で香港に働きかけるべきだと伊勢崎氏は提言する。

「制裁ではなく、国際法にのっとって起訴をする“日本版香港人権法”が必要。僕はいま、実際にある議員と衆議院法制局に働きかけて具体的な法案づくりをしています。人権という概念を普遍化し、この考え方を定着させる。それが人類の唯一の希望です。僕が香港で見てきたこと、聞いてきたことは明らかに国際刑事裁判所のローマ規程に反する、人道に対する罪にあてはまる。あと数カ月以内に立法化できると思います」

(文/大室みどり)