小学生女子に人気のマンガ誌「ちゃお」でも、主人公は何かしらの職業(アイドル、パティシエ、ファッションデザイナーなど)に就いている作品が少なくない。

 これが男子向けの「コロコロコミック」だとホビーもののマンガやギャグマンガはあっても、読者が将来就くかもしれない職業に従事している存在を主人公にしたものはほとんど見当たらない。

『まんがでよくわかるシリーズ』が男子以上に女子の心に深く刺さっているのはおそらくそういう違いによる。

 しかも『まんがでよくわかるシリーズ』は広く浅く売らなければいけない宿命を持つ市販の学習マンガや子ども向けの「○○になるには」的なキャリア教育本と比べ、かなり突っ込んだテーマと濃い情報量での構成を実現している。

 ひみつシリーズの題材は、回転寿司やアイスクリーム、お化粧といった子どもにとっても身近でありかつ興味の対象であるものから、下水道や窓、ゲーミングPCやフォークリフトといった「言われてみればどうなっているのかたしかに気になるけど、お金を出して買って読みたいかというとそこまでではないかもしれない」というものまで、非常に幅広い。

 この多様さは各業界のトップランナー企業の協力があるからこそであり、また、寄贈して無料で読んでもらうことを前提としたスキームだからこそだ。

 また、シナリオライターとマンガ家がみっちり取材をし、コラム類にも企業側の監修が入っていることもあって、読んでいてリアリティをもって仕事現場のことがわかる。また、たとえば『鉄のひみつ』では鉄鉱石から釘などの最終加工品になるまでの過程を、鉄から酸素や炭素を取り除く高炉のしくみや種類等々についてまで、非常に丁寧に解説している。

 小学校では、植物の発芽はどんなものかとか、化学反応というものがあるとか、社会科で各種社会問題の存在は学ぶが、そうした知識が世の中でどう活かされ、どんな仕事に活用されているかまでは、そこまで深く掘り下げられていないだろう。

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知識を社会で活用すること