──ところで撮影初日に報道フロアの先輩から「フワッとした理由で撮るのか」と問われる場面がありました。「テレビの今」を映すという企画説明でしたが、土方さん自身は「フワッ」としたものだという認識だったんですか?

「毎回そういうスタイルで東海テレビのドキュメンタリーは撮っているので。とくに今回は自分たちの職場なので、(前作『ヤクザと憲法』のように)ヤクザを追いかけているときよりもこういうものが撮れるだろうという予測はついていましたが、あえてフワッとさせておくのが取材の醍醐味というか。ふだんのニュースの取材だと、取材の回数も決められ、何分以内という制限もある。そうなると逆算して、何日以内につくるというふうになる。だからこそ逆算をしないで、フワッとさせる。そういう考え方でやっているんですが、ずっと嘘をついているように思われていたんですよね」

──嘘というと?

「つまり、おまえの頭の中に台本が出来上がっているんだろうという。それは、ぼくもよくわかるんです。(ニュースは)最初に落としどころを決めていないとできない」

──ワタナベくんたちが、前日が嵐で「今年は花見ができません」というニュースを撮りに行くと、なんとそこは満開。それでも彼は「桜が散ってしまい……」とレポートしようとする場面がありましたよね。

「あれは象徴的な場面で、結論ありき。取材は、塗り絵に色をつけにいくだけという皮肉になっている」

──コントのようなシーンですが、彼がどれだけのプレッシャーを感じ冷静さを欠いていたかが後々わかる場面でもある。子供たちのテレビ局見学の様子や「弱いロボット」のエピソードなどのつながりから、「弱者」との関わり方を考えさせられる映画になっている。

「それは、はじめて言われたことですけど、そこに目がいくのは、自分の中にもそういうところがあるからなんでしょうね。弱い人間が世の中にいてもいいんじゃないかという。もともとは制作部にいて(報道部の)ドキュメンタリー班に拾ってもらうまでは、要領がよくない、忘れる、叱られる、の連続でしたから。でも、あまり掘り下げすぎると自己弁護になってしまいそうで(笑)」

(取材・文/朝山実)