「こういうと話が大きくなるんですが、東海テレビ固有の問題は、編集の段階ですべて排除していっています。つまり『東海テレビ物語』ではない。どこのテレビ、メディアにも普遍化できるものをつくりたいというのがあった。だから、彼に対するまわりの反応は、おそらく他のメディアでもあることだろうなぁと思って表現をしました」

──他のメディアと比べてということでいうと、他所はもっとひどいかなぁと想像もします。ただ一連の東海テレビのドキュメンタリーを観てきた印象からすると「あの東海テレビにしてもそうか」というものがありました。

「そうですか。自分の反省として言うと、ぼく自身も土日にデスクとして渡辺君と組むことがあって。ついキツイ言葉をかけたこともありますし。ぼくは社員だから、ほんとうに弱い立場の人の気持ちがどこまでわかるのか。悲劇を通り越して、ツッコミたくなるくらい、弱い者の味方といいながら自分たちがそれを実践できていない。そこは描かないといけない。でも、想像以上にいろんなことが起きましたね」

──映画の後半で、局の看板だったニュース番組のメインキャスターが、ロボットの研究者を取材するのに同行される場面がありますよね。あれは撮ろうという目的をもって?

「意識はしていました。『弱いロボット』を取材するというので何か撮れるかもしれないと。福島(キャスター)はずっと逆の方向を目指していたんですね。強くなろう、正しくあろう、間違いはなしにしようと。いちばん彼が落ち込んでいたときだったこともあり、もしかした『弱いロボット』にヒントがあるかなぁと」

──あの場面のあるなしで映画の意味合いは変わったかもしれないですね。言いよどんだり、すらすら話せないロボットを見せられたりしながら「そこに人間らしさがある」といった説明を受け、福島さんの表情が変わる。それはワタナベくんに対する関わり方にもつながることでもある。

「それでいうと、いまのテレビには愛らしさがないですよね。あのロボットに感じるような。人間だから弱いところもあるだろうに、それは見せないようにしている」

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ずっと嘘をついているように思われていた