中藤:審査員を続けていると、だんだん応募者の名前と作品性が頭の中に染み込んできて、その人がこれまでに応募してきた作品の連続性みたいなものを講評を通じてやりとりをしているような感じになってきましたね。単なる応募者ではなく、作家一人ひとりの作品を見ているような気持ちになってきた。

大西:そういう人が「今年度は、こういうテーマでいくんだ」と、作家としてきちんと育っていく。そういう人がけっこう増えてきた。それってすごく大事だと思う。月例コンテストの枠にとどまらない、作家として活躍していく人。月例コンテストから生まれ育って有名になった写真家は少なくないですが、近年、酒田市が主催している土門拳文化賞の公募にいい作品が集まってくるんです。
 月例コンテストで年度賞をもらった人が受賞したり、最終選考に残ったりすることが少しずつ増えてきた。長年撮りためてきたテーマだからこの賞に応募して、次は個展を開いたり、写真集をつくってみたりとか、非常にいいかたちでモチベーションが上がってきて、作品の密度がすごく増しているんです。コンテストの審査員であるぼくらにとっては、ものすごくうれしいことですね。

中藤:やっぱり、真の作家が生まれてくれたらいいなと期待しちゃうんですね。そろそろ月例コンテストを卒業してもいいんじゃないかな、というレベルの人が何人も確かにいるのでね。

大西:月例コンテストも含めたアマチュア写真の未来への可能性というのはかなり大きいと思う。そこを目指してくる人たちがもっといてほしいなと思いますね。月例コンテストはその入り口。ぼくらの役目というのは、当然、写真を始めて間もない人たちに細かな技術的なこととか、表現力を磨くにはどうしたらいいとか、アドバイスもできるんだけれど、ベテランや中堅の人たちにはちょっと背中を押してあげて、一歩踏み出すようなアクションを起こさせたい。

中藤:月例コンテストが盛り上がって、その上のステップと連動していけばいいですね。

■ほんとうに楽しんでいますか?

大西:ただ、その一方で、「ただ、楽しければいいんです。趣味ですから」という人もすごく多いです。

中藤:ハイアマチュアの「腕試しの場」としての月例コンテスト。

大西:そういう楽しみもあって当然なんだけれど、それが逃げ道になっているみたいな気がして、ちょっと引っかかるんですね。例えば、スナップを組写真にしている人に「もう一回、今度は夏にも行って、密着して撮られたらいかがですか」とアドバイスをしても、「私は楽しければいいので」と逃げられちゃうことがある。すると、こっちは、カクッとなっちゃう。

中藤:まあ、アマチュアの人の楽しみとしての月例コンテストは否定できないですけれど……。

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「応募者の気迫がこちらにのしかかってくる」(中藤)