実際のアサヒカメラの「月例コンテスト」の選考風景。編集部員、選者の写真家ともに応募されたすべての写真に目を通す(撮影/写真部・小黒冴夏)
実際のアサヒカメラの「月例コンテスト」の選考風景。編集部員、選者の写真家ともに応募されたすべての写真に目を通す(撮影/写真部・小黒冴夏)

○大西みつぐ(おおにし・みつぐ)1952年、東京都生まれ。74年、東京綜合写真専門学校卒業。85年、太陽賞受賞。93年、木村伊兵衛写真賞受賞。主な写真集に『WONDER LAND 1980~1989』『遠い夏』『川の流れる町で』(撮影/植田真紗美)
○大西みつぐ(おおにし・みつぐ)1952年、東京都生まれ。74年、東京綜合写真専門学校卒業。85年、太陽賞受賞。93年、木村伊兵衛写真賞受賞。主な写真集に『WONDER LAND 1980~1989』『遠い夏』『川の流れる町で』(撮影/植田真紗美)

【写真】20年以上にわたり写真コンテストで審査員を務める大西みつぐさん

○中藤毅彦(なかふじ・たけひこ)1970年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部中退。94年、東京ビジュアルアーツ写真学科卒。2013年、東川賞特別作家賞受賞。15年、林忠彦賞受賞。主な写真集に『STREET RAMBLER』『White Noise』(撮影/植田真紗美)
○中藤毅彦(なかふじ・たけひこ)1970年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部中退。94年、東京ビジュアルアーツ写真学科卒。2013年、東川賞特別作家賞受賞。15年、林忠彦賞受賞。主な写真集に『STREET RAMBLER』『White Noise』(撮影/植田真紗美)

 全国から毎月3千点を超える応募が寄せられる『アサヒカメラ』の「月例コンテスト」。2019年10月号では「写真コンテストに勝つ!」と題し、審査員が明かす「着眼点から写真の組み方まで」を紹介ました。今回はこの特集から、今号まで審査員を務められたお二人が語る「写真コンテストを取り巻く現状」を抜粋してお届けします。

 *  *  *

■どれだけ批判されても 評価したい作品がある

大西:中藤さんは、写真雑誌の月例コンテストの審査は今回で何回目?

中藤:「日本カメラ」で1回、本誌で2回目です。1年、2年と選者を続けていくなかで、ぼくの審査が「偏っている」という反発や批判も聞こえてきましたね。SNS上で書かれたり、手紙が送られてきたり、ぼくの写真展会場に直接乗り込んできたり。

大西:ギャラリーに乗り込んでくる、というのはすごいね。

中藤:ぼくは自分の中にない、見たことのない作品、作者の体の中に響いている音に従って撮っているような作品を見たいんです。それが一般的に評価されるものじゃなくてもいい。教科書的にはダメ出しをくらうような、常識では理解されないような作品でも、作者にとっては必然性があってやっている表現であれば、どれだけ批判されてもそういう作品を評価したいんです。神経をすり減らしながら必死に選んで、真剣勝負だと思ってやっている。

大西:ぼくは本誌や「日本カメラ」の月例コンテストを含めてもう20年以上、審査員をやってきましたけれど、40代のころはいじめられたというか、「なんでこんな作品を選んでいるんだ」みたいなことを言われましたね。

中藤:そういう意味では作品の審査をしているのと同時に、こちら側が読者や応募者から問われている感じもありますね。

大西:そうなんですよ。実際、応募者もぼくたちを試していると思う。例えば、審査をしていると、「これは以前、どこかで見たな」という写真があって、それはたぶん作者が「この作品はいいし、好きなのに、どうしてこの作品が入選しなかったのか」と思って、「もう一回、試しに同じ写真を出してみよう」「ちょっと違う別カットを応募してみよう」と出している。そういう作品は既視感があって、「あっ、見たな」と。

中藤:時々、そういうことはありますね。

大西:写真雑誌の記事って、カメラやレンズの新製品のテスト撮影も含めて、だいたいプロの写真家や専門性を持った人がやるじゃないですか。でも、月例コンテストは誰でも参加できて非常に参加性が高い。応募するということから始まって、予選通過で名前を見たり、入賞したり、ほかの人の写真を見て「なんで、こんな作品が入賞したのだろう」「審査員は何をやっているんだ」とか。直接、話をしに来たりとか。

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「アマチュア写真の未来への可能性はかなり大きい」(大西)