中藤:話は変わりますが、月例コンテストではないんですが、ある雑誌で、編集部で粗選びをしているところがあったんです。編集部が応募作を事前により分けて、要するに編集部のお眼鏡にかなった作品の中から選ぶと。それは、ぼくはつまらないと思うんですね。編集部が落とした作品の中に「宝」があるんじゃないかと思って。

大西:確かに、確かに。

中藤:本誌の月例コンテストは間違いなく全部の作品を見て選んでいる。落ちた人がいろいろなうわさを立てて、それがほかの人に伝わって、「アサカメのコンテストは編集部の粗選びがあるそうですが、どういうことですか」と、実際にぼくにメッセージが送られてきたんですけれど。それは誤解であると、強く返信を書いたんですけれどね。

大西:世の中には写真雑誌だけじゃなくて、さまざまな会社や公共団体が写真コンテストをやっていて、審査員として会場に行ってみると、「前日にわれわれの部署で粗選びしました。これは残った写真です」。それが40点、50点。最初は500点くらいあったのに。なんで、そんなことをしてしまうのか。なんとか協会の人たちのお眼鏡にかなった写真を出したい、というのはわかるんです。でも、上位入賞は無理だけど、これから伸びる可能性のある写真とか、チカラがある写真も見つけ出してあげたいんです。

中藤:全部の作品を審査して、その結果について、主催者側から「この作品はちょっと問題がある」と言われるのはまだわかるんです。いろいろな事情はあるでしょうからね。けれど、先に主催者側に選ばれてしまったら、応募作品の可能性が多少なりとも失われてしまう。

大西:東日本大震災からの復興を見つめた写真コンテストなどでは、つぶさに全応募作品を見たかった。ぼくの目の前に上がってこなかった写真こそ見たい。

中藤:粗選びをした残りの写真も見せてほしいですね。その中にいい作品があるかもしれません。

■風土を伝える地方のコンテスト

中藤:ぼくは大西さんからバトンタッチされて、鹿児島県の南日本新聞社が主催している南日本写真展の審査をしているんですが、ものすごくその土地に根差して長年続いてきたコンテスト。ローカル性が写真に表れて、それが醍醐味でもあるんですね。

大西:県展とか、地方の大きなコンテストにしても、例えば全部の入選作をスナップ写真だけで選べるわけもない。その土地ならではの風景も含め、丹念に選び評価して、地域を写真で残すことの可能性を見つけ出して伝えなければならない。そういう役目があります。

中藤:その土地の風土をきちんと表現していこうということですね。

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「地方のコンテストは少しずつ変化している」(大西)