実際、マジョルカでの立ち位置はまだまだ微妙と言わざるを得ない。9月25日のアトレチコ・マドリード戦と29日のアラベス戦に2試合連続スタメン出場した時には「久保は完全にレギュラーをつかんだ」と見る向きも多かったが、直後の10月6日のエスパニョール戦では再びサブに戻っている。この扱いを見ても、チーム内での立場は不安定だというしかない。

 加えて、マジョルカは目下、18位と2部降格圏に沈んでいて、チーム状態が芳しいとは言えない。ビセンテ・モレノ監督の更迭など予期せぬ事態が起きる可能性もある。そんな諸事情を勘案すると、久保は当面、チームで足場を固めることに徹した方が得策だろう。

 ただ、欧州組は3、6、9、10、11月のインターナショナルデーしか招集できないから、森保監督が「可能な限り、手元に呼んで見たい」と熱望するのも分かる。しかも次の11月シリーズは、14日に2次予選・キルギス戦(ビシュケク)があり、その後は17日にU-22日本代表のコロンビア戦(広島)、19日にA代表のベネズエラ戦(大阪)と試合が控えている。A代表として招集し、なかなか融合させるチャンスのないU-22代表の方に出すことも物理的には可能だ。そういう事情もあって、次も強行招集に踏み切ることは十分考えられる。

 それが本当に久保のためになるのかどうか……。指揮官にはこの先の彼自身と日本代表にとって何がベストなのかを今一度、再考し、明確なビジョンを打ち出してほしいものである。(文・元川悦子)