マジョルカでしばしばプレーすることのある左サイドにしても、ファーストチョイスの中島、2018年ロシアワールドカップ組の原口に加え、タジキスタン戦で結果を出した浅野も参戦し、競争はより熾烈になったと言っていい。

 他の2列目候補者たちを見ても、招集見送りになっている香川真司(サラゴサ)と乾貴士(エイバル)という30代の経験あるベテランも控えているし、今回のU-22ブラジル遠征で勢いと破壊力を示した食野亮太郎(ハーツ)ら新戦力も台頭してきた。ここまでつねに年代別代表で飛び級を重ね、18歳でA代表デビューまで上り詰めた久保と言えども、これだけの凄まじいサバイバルを勝ち抜くのはそう簡単ではない。現実の厳しさを彼自身も改めて痛感したのではないだろうか。

 森保監督が今、久保の起用に躊躇しがちなのは、9月のパラグアイ戦(鹿島)後に記者会見で指摘した「守備の強度」の問題を懸念しているからだろう。所属のマジョルカでも屈強な黒人選手と対峙した際、久保が吹っ飛ばされたり、一瞬でかわされたりするシーンがしばしば見受けられる。逆に攻撃側に回ってドリブル突破を挑む際も、球際や寄せの厳しさに苦しむケースが少なくない。広いスペースがあり、相手の寄せが甘ければ、持ち前の創造性やアイデア、高度なテクニックを駆使して決定的チャンスを演出できるのだが、つねにそういう状況ばかりではない。

 さらに言うと、アジア2次予選では、今回のタジキスタンのように体当たり覚悟で日本選手をつぶそうとしてくるチームもあるだけに、まだ完全に成長期が終わっていない久保のような選手を出すのはケガなどのリスクが高い。指揮官もそのあたりを危惧していると見られる。

 こういった課題を克服するためにも、久保はしばらくマジョルカでのプレーに専念し、リーガ・エスパニョーラの強度に慣れることに努めるべきだ。欧州最高峰リーグの1つであるスペインにおいて攻守両面で自由自在にプレーできるようになれば、アジア予選で球際や寄せに苦しむことはなくなる。毎月のように日本とスペインを往復する肉体的負担がなくなり、クラブでじっくりとサッカーに向き合うことができるようになれば、伸び盛りの彼はもっと大きく成長できるし、マジョルカでの定位置確保にも近づくはずだ。

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マジョルカでも立場は微妙