また、京都大の永田雅宜教授(当時)は、78年度実施は無理という見方を示している。

「各大学では二次試験をどうするかがまだ決まっておらず、あと一年くらいかかる。それから発表では遅すぎます」(76年2月27日)

 結局、78年度の実施は準備不足ゆえ、あきらめざるをえなかった。とうとう3回目の見送りである。

 そして、79(昭和54)年度実施という線で動くことになり、試行テストなど準備を進めた。

「国立大共通一次試験 54年度から実施」(76年11月19日)
「国立大共通一次テスト 来年12月下旬に 大学局長答弁」(77年3月15日)

 これで79年度からの共通一次実施が正式に決定する。実施の2年前の話だ。しかし、これにて一件落着、万々歳とはいかなかった。肝心の実施日程が揺らぐことになる。

「共通一次テスト12月実施 悩む冬季スポーツ選手」(77年3月28日)
「『共通一次』繰り下げ検討 高校側要求で動く」(77年10月25日)
「共通一次試験繰り下げ 国大協も受け入れ」(77年11月16日)

 共通一次の日程は当初、12月下旬となっていた。これに対して高校が反発する。全国高等学校長会は文部省に次のような要望を出した。高校のカリキュラムを圧迫し、高校生にとって試験の重圧が長期化する、文化祭や体育祭など重要な学校行事ができなくなる、そのため共通一次の日程を1月中旬以降にずらしてほしい―――。

 文部省はこれを聞き入れた。こうして、79年1月13、14日に最初の共通一次が行われた。 厳しい見方をすれば、これで見送り4回目となる。

 大学入学共通テストを目前にした現在と比べてみよう。

 大学入学共通テストは、2013(平成25)年、教育再生実行会議で提言された。16(平成28)年の高大接続システム改革会議の最終報告などを受けて、21(令和3)年実施を決定する。構想から8年、正式決定から5年である。

 共通一次の構想は1970年に生まれた。その後、何度か実施年度を定めたが、先送りを繰り返し79年度の実施となった。

 共通一次は実施年度を決めたものの、調査、研究などの準備不足が明らかになると先送りしている。また、大学や高校からの意見を参考にしながら、不備なところは是正している。たとえば、入試日程である。

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