「教科書や参考書の音声教材はスピードがどうしても遅い。加えて自己紹介、買い物、待ち合わせ、電話……と、日常が確かに切り取られているものの、会話の内容がおもしろくない(笑)。一方、映画・ドラマはauthentic(本物)な表現をリアルなスピードで聞ける。イマドキな英語コミュニケーションが学べるのも魅力ですね」

 ステップアップの手順は、「聞き取れるようになりたいと一生懸命聞く」→「わからなければ何度も繰り返して聞く」→「聞こえるように、話せるようにと音読をする」ことだ。英語に耳が慣れると、ケンカなど切迫した早口の場面でさえ理解できるようになるという。

 こんなにいいことずくめなら、映画&ドラマ学習をいますぐにでも始めたいところ。ただ、過去に挫折を経験した人もいるかもしれない。手始めに、どんな作品を選べばいいのだろうか?

「シットコムでもいきなり初級者が『フレンズ』に挑戦するのは難しすぎるかも。数話見て無理だと思えば、英語の難度が一段下がる『フルハウス』に切り替えましょう。さらに、もう一段易しくなるのが『となりのトトロ』といったスタジオジブリ作品や『君の名は。』など日本アニメの英語吹き替え版。このあたりは英検準2 級、2 級レベルで、ナチュラルなスピードの口語英語に親しむ入り口としてぴったりです。逆に医療、刑事、法廷を題材にした作品は、どうしても専門用語が飛び交い、学習という視点から見ると難度が上がるので選ぶときには要注意です」

 アニメ作品の英語でも難しいと感じる初級者は、最初に日本語で全部見てしまい、ストーリーやセリフを把握。次に音声を英語に切り替え、英語字幕もオンにする。こうするだけでもハードルを下げることができ、楽しめる。

「初級者は最初から英語で全編を真剣に見ようとせず、気に入ったシーンや特に使えそうな場面に絞って5分、10 分と短い時間だけ集中して見ることからスタートしてみて。また、YouTubeには短編もたくさんアップされています。『heart warming』『funny』『moving』などのキーワードで検索をかけると、良作に出会えることがありますよ」

 安河内さん自身は、最近ではNetflixを愛用しているそう。

「英語の映画・ドラマが気軽に見られるようになったいま、これを活用しない手はありません。英語はノートや参考書の代わりに、リモコンを持って学ぶ時代かも!」

安河内 哲也(やすこうち・てつや)
東進ハイスクール・東進ビジネススクール英語科講師。予備校や中学・高校、大学での講演のほか、大手企業でのグローバル化研修の講師なども務める。「MAINICHI WEEKLY」で「安河内哲也のこの映画で学べ!」を連載中。

(文/山本 航)