他の競技団体でも、だいたいがこれと同じようなやり方をとっており、足りないときには外部のスポーツドクターなどに依頼することもあります。


 
 競技団体の専属スポーツドクターは、通常は公募制で決まるわけではありません。条件としてスポーツドクターとしての技量と人柄を備え、チームや選手とも相性がよく、厚い信頼を得られるような人物が望ましいのです。現実には、小さな大会などで経験を重ね、競技団体や選手、スタッフから信頼を得て、より大きな大会に声がかかることが多いようです。

 そんな専属スポーツドクターたちも、チームに帯同するとき以外、普段は一般の病院に勤務しています。そのため、しばしば試合帯同などで勤務を抜ける事態になり、病院によっては日常診療に支障が出るケースもあります。

 代表チームへの帯同となると、1年のうち数カ月病院を留守にすることもあります。勤務先の病院の上司、同僚医師たちの理解と協力がなければ難しい現状があるため、一般病院の勤務医で専属スポーツドクターになることは困難が伴います。スポーツ医学センターのような組織がある病院であれば、皆がさまざまなチームに帯同するため、比較的に専属スポーツドクターの活動がしやすいといえるでしょう。

 将来的には、個人契約でなく、病院契約にできれば、帯同スポーツドクターの活動がよりやりやすくなっていくでしょう。

 競技スポーツの現場で、スポーツドクターは大きな役割を果たしています。本来であればどのチームにも帯同スポーツドクターの存在が必要ですが、小さな競技団体や大学、高校などのアマチュアチームでは費用の面で雇うことが難しいのが現状です。今後、スポーツドクターの認知度が上がり、活躍の場がより一層増えていくことが期待されます。

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松本秀男

松本秀男

松本秀男(まつもとひでお)/医師。専門はスポーツ医学。1954年生まれ。東京都出身。1978年、慶応義塾大学医学部卒。2009年から2019年3月まで、慶応義塾大学スポーツ医学総合センター診療部長、教授。トップアスリートも含め多くのアスリートたちの選手生命を救ってきた。日本臨床スポーツ医学会理事長、日本スポーツ医学財団理事長。

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