今回のガイドラインで非推奨となった理由をみてみると、飲むと健康に良くないという証拠はないが、アメリカの幼児の栄養は充足しているため、あえて飲む必要はない、ということのようです。

 それでは、日本の幼児の栄養摂取状況はどうでしょうか。平成29年国民健康・栄養調査によると、例えば1~6歳の子どもの鉄分摂取量は、女性で1日平均4.1ミリグラム、男性で4.4ミリグラムです。この年代の摂取推奨量は1日4.5~5.5ミリグラムですから、明らかに足りていません。

 食事から鉄分などの栄養をしっかり取れるに越したことはありませんが、子どもがお肉や小松菜をパクパク食べてくれるとは限りません。我が家の食事を考えてみても、栄養摂取がきちんとできているとはとても思えないのです。現状では、食事以外で栄養素を補う必要のあるご家庭もあるでしょう。

 そこで候補となるのは、鉄強化した牛乳やおやつ、そしてフォローアップミルクです。市販の鉄分強化した牛乳は、200ミリリットルあたり3ミリグラム以上の鉄分が入っています。1日1杯程度なら良いのですが、それ以上になると、幼児には多すぎます。フォローアップミルクは甘味はしっかりありますが、大手メーカーのものは砂糖は入っておらず、乳糖やガラクトオリゴ糖、フルクトオリゴ糖が入っているようです。鉄入りのおやつも手軽で良いと思いますが、砂糖を控えるという観点から言うと、砂糖の入っていないおせんべい等が良さそうです。

 健康に良い食事は大切ですが、大人だってたまには甘いおやつを楽しんだりするものですし、窮屈すぎるのも大変です。あくまで飲み物は水かカフェインレスのお茶、という基本に立ち返りつつ、果物のジュースや鉄分強化したおやつ、フォローアップミルクなど、ストレスにならないよう柔軟に取り入れていけたら良いのではないかと思います。

(※)”Healthy Beverage Consumption in Early Childhood” Healthy Eating Research

○森田麻里子(もりた・まりこ)/1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表。

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森田麻里子

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森田麻里子(もりた・まりこ)/1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産し、19年9月より昭和大学病院附属東病院睡眠医療センターにて非常勤勤務。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表

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