広島・大瀬良大地 (c)朝日新聞社
広島・大瀬良大地 (c)朝日新聞社

「悔しいですよね、やっぱり……。リーグ優勝というのが難しいのはわかっている。でもチームとしてさらにその上、日本一になるという最終的な目標がある。そこへ向けて1つずつ準備をしている中でリーグを勝てなかった。悔しいし、自分自身、『何やってるんだ』という気持ちもある」

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 カープのエース・大瀬良大地は、いつも通りに語ってくれた。黙々と練習をこなす姿はシーズン中とまったく変わらない。グラウンドにはできるだけ早く姿を現し、汗を流す。練習メニュー消化後はメディアへ、可能な限り対応を欠かさない。どんなに長い質問に対しても嫌な顔一つしないで答えを用意する。

 しかし、『優勝を逃したチームのエース』という現実を、人一倍責任感の強い男が軽く受け流しているはずがない。そのあたりのギャップに、見ている周囲の胸がつまりそうになる。

 9月21日、巨人が5年ぶりのリーグ優勝を決めた。さかのぼること約半年前の3月29日、広島。まだ夜は少し肌寒いほどの開幕戦。大瀬良は素晴らしい投球内容で、エース・菅野智之を擁する巨人を打ち破った。

「何か鬼気迫るような新しい大瀬良の姿を見ることができた」

 試合後に緒方孝市監督が語ったように、走者を出しながらも8回を投げ124球、被安打7本、11奪三振、無失点に抑える好投。リーグ4連覇を目指すチームの初勝利に貢献した。

 だが、最高のスタートを切ったように見えたチームは波に乗り切れず、連勝、連敗を繰り返したシーズンだった。なかでも交流戦を挟む6月後半からは11連敗も記録。首位に立つこともあったが、結果的にはリーグ優勝を逃してしまった。

 今年の広島を振り返ると、リーグ3連覇中には考えられないことも多かった。開幕からリードオフマン田中広輔やチャンスに強い松山竜平など、レギュラー選手の絶不調が重なった。シーズン中には外国人選手のドービング問題も表面化し、処分対象となった。

 ここまでの連覇期間中も山あり谷あり、さまざまな逆風も吹いた。それでも、それらを真正面から受けとめ、突き進んできたが、今年はそうも行かなかった。そんなタフな状況下で『エース』の称号を授かってマウンドにのぼり続けたのが、大瀬良だった。

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これまでと違う今季の立場