2018年にリーグ3連覇を達成したチームで15勝を挙げ、最多勝と最高勝率のタイトルを獲得。今年は自他共に認める投手陣の柱となった。

 九州共立大から13年ドラフト1位で入団。1年目から10勝を挙げて新人王獲得し、「未来の広島を背負う」と言われた。勝てない時期もあったが、4年目の17年には再び10勝、そして昨年の活躍だ。

 また「背番号14」は、若くして命を落とした『炎のストッパー』こと津田恒実さんの背負ったもの。いやがうえにも周囲の注目を集め、期待も大きかった。

 加えて、これまでは自らが二桁勝っても、それ以上の勝ち数を挙げる投手が他にもチーム内にいた。昨年15勝を挙げ、今年はチームの勝ち頭として迎える初めてのシーズンだった。

 リーグ優勝は当たり前、目標はその先の日本一。広島に携わる関係者、ファンの誰もが切望している頂点へ向け、大瀬良にかかるプレッシャーも当然、大きかった。

「試合に挑む、技術、コンディション、メンタルのバランスが良くなっている。安定した投球で試合をコントロールできるような感覚はわかるようになった」

 開幕前、昨年同様の活躍を大きく期待させてくれた。しかし、チーム状態などもあり、シーズン序盤から大きな重圧が加わる状況下の登板が多かった。

「負けられない試合で負けはしたけれど、チームを強く意識した。この経験を生かしたい」

 春先、チームが連敗時にそう語っていた。

「1試合1試合、投げる試合に全力を注いで、チームの勝利に貢献したい気持ちは変わらない。でも長いシーズンの中で『この試合は絶対に……』という試合もある。結果論かもしれないが、そういう試合で自分が投げて勝てなかった」

 シーズン終盤、自らの責任にもふれた。

 今シーズンも成績だけを見れば決して悪くないが、本人の求めている境地には達していないのだろう。シーズンを通して投げていく中で、気持ちの変化が決して小さくなかったのは想像できる。それは自らのチーム内での立ち位置を理解しているからだ。

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エースの宿命