最後に、車内のマナーに関する表現をまとめておこう。

 例)携帯電話の着信音や通話がうるさくて、マナー違反だと伝えたいとき

“Would you please switch your mobile phone to the silent mode?”

「マナーモードに切り替えていただけますか?」

 マナーモードは和製英語なので、「the silent mode」と言うのが分かりやすい。

“Telephone call is prohibited on the seat.”

「席での通話は禁止です」

“Would you please go to the end sections near the door if you wish to use your mobile phone?”

「どうしても通話をしたい場合は、デッキでお願いできますか?」

 このとき、「Deck」と言っても通じない。列車のデッキは「vestibule」と言うが、これは専門用語なので、この用語を知らない外国人もいるだろう。ここでは、車内アナウンスでも耳にする「the end sections near the door」(ドア近くの車端部)を使ってみよう。

 ほかにもマナーといえば、たばこについてもトラブルになりやすい。最近はほとんどの列車が禁煙になっているものの、東海道新幹線のN700系では、喫煙ルームが16両編成中の4カ所に設置されている。そこで、車内アナウンスでの表現を再録してみた。

“Smoking is not allowed on this train except in the designated smoking rooms located in cars No.3, No.7 and No.15. The smoking room in car No.10 is for the passengers in the Green Cars.”

「車内は禁煙です。ただし、喫煙ルームが3号車、7号車、15号車に設置されています。なお、10号車の喫煙ルームはグリーン車専用です」

 車内アナウンスを聞いていない人もいるので、この表現を使って教えてあげたい。何げなく使っている用語の中には和製英語が交じっていて、知らずに使うと通じないことも多々ある。あらかじめ知っておくと会話がしやすくなるので、もう一度確認して、通じる単語を覚えておきたい。

○プロフィール
野田 隆(のだ・たかし)/1952年、名古屋市生まれ。早稲田大学法学部卒、同大大学院法学研究科修了。長年、都立高校で英語を教えていたが、2010年に早期退職後、旅行作家として活動。おもに国内外の鉄道紀行を手がける。著書に『シニア鉄道旅のすすめ』(平凡社新書)、『テツ道のすゝめ』(中日新聞社)など多数。8月末に『今すぐ出かけたくなる魅惑の鉄道旅』(産業編集センター)を刊行予定。