連続テレビ小説「はね駒」のヒロイン・橘りん役に挑戦した斉藤由貴さん

「前の人とのことがあったにも関わらず、本当に学ばない人間なんだなと自分のことながら悲しい気持ちです」

 このあたりで「彼女はそういう人だ」と気づいた人も多いだろう。それこそ、石田純一や火野正平あたりに近いカテゴリーに入ったともいえる。ただ、さすがに懲りたのか、彼女は軌道修正をした。「学ばない」発言の翌年、同じモルモン教徒の一般男性と結婚。やがて3児の母となり、しばらくは平穏な家庭生活を続けていくのである。

 じつはこれ、彼女ならではのバランス感覚でもあった。筆者の取材ではないが、93年秋にこんな発言をしている。

「宗教の重荷がなかったら自分がどこかへ飛んでいっちゃうから。逆にそういう重荷があるからこそ、自分が飛んでいこうと思ってあがくのかもしれない。(略)モラルとかインモラルとかいう言葉にしても、そのふたつが離れているほど、よりドラマチックな生き方になりますよね」(「VIEWS」)
 

健全と頽廃のあいだで激しく揺れ動く

 モラルとインモラル、すなわち健全と頽廃のあいだで激しく揺れ動くのが自分という人間であり、信仰などを活用してうまくバランスをとっていくしかない、という人生観が見てとれる。彼女もまた、自分はそういう人だ、ということをこの時期、気づき悟ったということだろう。

 こうして十数年間、モラル=健全の側に安住していられた斉藤。しかし、子育ても落ち着いてくると、また、インモラル=頽廃の側へといざなわれるようになる。きっかけは、ダイエットだった。2012年に父親から「背中が丸いな」と言われたことから一念発起。固形物はキャベツとレタスくらいという、絶食に近い方法もとりいれながら、3ヶ月で11キロ痩せた。

 このあたりから、女優業にも勢いが戻る。大河ドラマ「真田丸」や映画「三度目の殺人」などでの助演にさすがだという声が出た。本人は演技も肉体表現なのだから、肉体のための努力をすることが大事だとしたうえで「一生懸命頑張ってる人は評価されやすい」のではと分析していたものだ。
 

次のページ
妖しい魅力が復活