ランビエールはリプニツカヤのプログラムを振り付けたことも(撮影/写真部・加藤夏子)
ランビエールはリプニツカヤのプログラムを振り付けたことも(撮影/写真部・加藤夏子)
和風に装ったランビエールは美しいスケーティングをみせる(撮影/写真部・加藤夏子)
和風に装ったランビエールは美しいスケーティングをみせる(撮影/写真部・加藤夏子)
ロシアで鍛えたリプニツカヤのスケーティングは健在(撮影/写真部・加藤夏子)
ロシアで鍛えたリプニツカヤのスケーティングは健在(撮影/写真部・加藤夏子)
帝の気品を表現するランビエール(撮影/写真部・加藤夏子)
帝の気品を表現するランビエール(撮影/写真部・加藤夏子)

『氷艶2019―月光かりの如く―』(7月26~28日、横浜アリーナ)では、 日本文化の源流である源氏物語を、ヨーロッパ出身のスケーター、ステファン・ランビエールとユリア・リプニツカヤが見事に表現している。

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 演出の宮本亜門氏が、主演・高橋大輔のよいライバルとなる相手としてキャスティングしたランビエールは、高橋が扮する光源氏の異母兄にあたる朱雀帝を演じる。日本でも人気が高いランビエールは今まで多くの日本のアイスショーに出演しているが、日本の古典を演じるのはやはり特別な体験だったようだ。プログラムに掲載されたインタビューで、ランビエールは源氏物語を理解するのは荷が重いことを理解した上で「だからこそやりがいがあると感じた」と語っている。

「日本に来るたびにこの国の歴史を知るようになり、興味を持っていましたので、さらに深く知る機会をいただけて感謝していますし、美しい日本風の衣裳で演技を披露するのをとても楽しみにしています」(プログラムより)

 ランビエールのスケーティングに備わる気品は帝にふさわしく、また随所で見せる高橋との共演も見応えがあった。ランビエールの端正なスケーティングと、高橋のドラマティックな滑りを同時に堪能できるのはなかなかできない体験で、会場を埋めた観客にも深い印象を残しただろう。原作では優し過ぎるが故の弱さを持つ朱雀帝が、ランビエールの滑りによって光源氏に対抗する強さを持った人物として氷上に姿を現した。

 桃色の衣裳をまとった、ユリア・リプニツカヤ扮する紫の上がリンクに滑り出てくると、自然に拍手が起こった。リプニツカヤの現役時代のプログラムでは、赤い衣裳でユダヤ人の少女を演じたソチ五輪シーズンのフリープログラム『シンドラーのリスト』が印象的だ。当時15歳だったリプニツカヤにはその年齢にしかない魅力があったが、21歳となった今の彼女にも、愛らしい少女として鮮烈に登場する源氏物語のヒロイン・紫の上を演じるのにふさわしい若々しさがある。

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