3. できないものとして最悪を避ける

 やってみるとわかりますが、癖を置き換えるのはなかなか難しいことです。健康被害の少ない新しい癖のほうが楽しい、となればいいのですがそうは簡単にいきません。

 私のトリコチロマニアの場合、毛を抜くのはなんとしてもやめたいのですが、この癖がなかなか直らなかったので「髪の毛を触るのはOK」としました。

 アトピー性皮膚炎の方の場合は、爪でひっかいて傷になってしまうことだけは避けたい。傷ができると感染源になりますし、治るまで時間がかかります。なので、かきむしってもよいように爪は必ず切っておく。かきはじめてしまったら、かいてもよい時間を決めておく。かくときはなるべく皮膚を傷つけないように指の腹でかくなど、ある程度は許してあげたほうがよい場合もあります。できないものと想定して最悪を避けるように工夫します。

まとめ

 今回はトリコチロマニアを直すため自分が実践した具体的な行動を紹介しました。髪の毛を抜いてしまうトリコチロマニア以外にも、円形脱毛症やその他の病気で毛が薄くなることがあります。毛が薄くなったと感じたら、まずは皮膚科を受診しましょう。

 また、生活習慣病のように、皮膚病を引き起こす悪い癖というものがあります。癖を直すのはとても難しく、トリコチロマニアも症状が強い場合は専門家の指導が必要ですし、薬物療法が適応となる場合もあります。日常生活の工夫で対応できる程度であればよいのですが、生活に支障が出るほどの悪い癖である場合は、心療内科の医師に相談することをおすすめします。

○大塚篤司/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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