――ちなみに、クモはどういうところにいるんですか?

 クモは、どこにでもいます。海辺でも、高山帯にもいます。

 部屋のなかだと、チリグモという1ミリくらいのクモがいる。室内で壁や天井を這っているのはアダンソンハエトリ。黒っぽいのが雄で、茶色っぽいほうが雌です。本当は家の土台の近くや植木鉢、庭の下草などにいるクモなんです。ビルの地下室や、郊外にお住いの方で物置やガレージがある家ではイエユウレイグモなども見ることができます。

 地中性だと、ジグモとキシノウエトタテグモはそのへんの公園にもわりといます。雨戸の戸袋とか積んである石を起こしたりすると、ヒラタグモやアシアカグモも出てくる。庭木の葉の上や塀にはネコハグモがいる。オオヒメグモもトイレの洗面台の下などに網を張っています。網の中央にゴミを集めて巣にするゴミグモは筑波の実験植物園にいました。ハナグモのように花や葉の上にいるタイプは、捕虫網でガサガサすると獲れます。

 変わったところでは水中にいるミズグモ、糸で水中に入れ物をつくり、そこに体や足の毛を利用して空気を運んできて部屋をつくるんです。絶滅危惧種ですが、北海道のサロベツ原野や釧路湿原など、水がきれいで大型の魚がおらずタヌキモが繁茂しているところにいるようです。また、海の満潮線と干潮線の間にいるヤマトウシオグモというのもいます。

――クモの寿命は?

 だいたい1年ですね。雄は交尾したら死んじゃって、雌はそれから餌をせっせと食べて卵を産んで、それからだいたい死んでしまう。卵からかえった子どもが越冬する。クモで卵で越冬するのはジョロウグモくらいです。1世代が2か月程度のクモもいるし、3~4年くらい生きるのもいる。最大のクモ、タランチュラは雌だと20年くらい生きるものがいます。だから、ペットにしやすいんですね。

――先生が一番好きなクモは?

 いま研究対象にしているのはハラフシグモ科で、生きた化石、シーラカンスレベルのクモです。3億年前に化石で見つかったクモとほとんど形が一緒なんです。糸が一種類でちょっとしか出なく、土のなかで暮らしていますが糸は入り口にしかない。毒もほとんどありませんが牙がすごく大きい。まあ、ほかのクモも大好きです。

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クモの観察には根気が必要