イエユウレイグモのメスと子グモ(小野先生提供)
イエユウレイグモのメスと子グモ(小野先生提供)
水中にすむミズグモ (c)朝日新聞社
水中にすむミズグモ (c)朝日新聞社
美しいコガネグモ(小野先生提供)
美しいコガネグモ(小野先生提供)
クモ研究歴50年の小野展嗣さん
クモ研究歴50年の小野展嗣さん

 夏休み、悩みの種といえば自由研究のネタ探しだろう。そこでお勧めなのがクモ。毒グモもいるが素手で触らなければ大丈夫、生態や姿形もよくよく見れば興味深い。学習まんが『バトル・ブレイブス 殺人ヘビと猛毒グモ』(7月5日発売)の監修者でクモ研究歴50年の国立科学博物館名誉研究員・小野展嗣さんに、クモの魅力と自由研究の方法をたっぷり聞いた。

*  *  *

――クモを研究して50年、いまでもクモほど面白い生き物はいないということですが、クモの面白さってなんでしょうか

 まず、昆虫と全然違う。眼の数も昆虫は複眼が2個あるのが主流ですが、クモは主に単眼(光の強弱だけがわかる)が8個。ただしハエトリグモだけはものの色や形がわかる目をもっています。

 また、羽もないし、脚の数も昆虫は6本、クモは8本。実は付属肢は12本あるんですが、最初の脚は鋏角、次の脚は手の役割をする触肢になっています。残りの8本が歩くための歩脚です。

 クモには、昆虫にもエビ・カニ類にもある触角がありません。また、昆虫と違ってさなぎなどに変態せず、卵から成虫と同じ形で出てきます。そしてなんといっても、すべてのクモが糸を出す。網を張るのはもちろん、空を飛ぶなどいろいろ糸を利用して生活しています。クモは張る網もそれぞれ違いますし、ハエトリグモのように網を張らずにぴょんぴょん飛んで生活しているものもいる。しかも、全種類がハンター。ハンティングの方法をそれぞれの種類が磨いていて、そこも面白いところです。原始的なクモは地中性で地面に穴を掘って糸で壁や戸を作りますが、進化すると植物の上に簡単な網を張り、さらに空間に立派な網を作るようになった。これは、主な餌である昆虫が空を飛ぶようになったことに対応しているんですね。昆虫の生活の多様性にあわせ、クモもいろいろな狩猟方法を持っています。

――クモは、何億年も形を変えていないと聞きました。

 原始的な生き物なんです。生活ぶりも古風で、たとえば呼吸器官が昆虫ほど発達していなくて、マラソンもできない。羽も生えてこないですし、クモのなかでも原始的な種類と進化した種類がありますが、形がほとんと変わらないですね。

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福井洋平

福井洋平

2001年朝日新聞社に入社。週刊朝日、青森総局、AERA、AERAムック教育、ジュニア編集部などを経て2023年「あさがくナビ」編集長に就任。「就活ニュースペーパー」で就活生の役に立つ情報を発信中。

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クモはどこにでもいる