森田麻里子(もりた・まりこ)/1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表
森田麻里子(もりた・まりこ)/1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表
この記事の写真をすべて見る
(写真はイメージ/Gettyimages)
(写真はイメージ/Gettyimages)

 日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、2人の女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は、自身も1児の母である森田麻里子医師が、「子どもの運動が精神的健康に及ぼす影響」について「医見」します。

*  *  *

 子どもにとって、運動は、体の動かし方を学んだり、筋力や持久力をつけたりするために大切なものです。さらに、学童期から思春期にかけての運動は、メンタルヘルスによい影響を及ぼし、うつ症状やストレスを軽減したり、自尊心を高めたりする効果があるということもわかってきています。大人でも、運動をすると、なんだか気分がすっきりしたり、前向きな気持ちになれたりするのは、経験されたことのある方も多いのではないでしょうか。このたび、思春期に運動をすることが、長期的に精神状態によい影響を及ぼしている可能性を示唆する研究結果が発表されましたので(※1)、紹介したいと思います。

 この論文は、5月にアメリカの小児科医や医療政策の研究者たちが発表したもので、中高生時点でチームスポーツに参加していたかどうかで、複雑な家庭環境をもつ子どもたちのメンタルヘルスがどう変わるかを調査しています。

 この研究では、ひとり親、親が服役している、親がアルコール依存症である、虐待やネグレクトを受けていたなどの家庭環境にあった中高生を含む約9600人のアンケート結果を解析しています。家庭環境に注目しているのは、家庭環境の複雑さが、メンタルヘルス悪化のリスクの1つと言われているからです。さらに、中高生時点と、その13~14年後、彼らが24~32歳になった時点のアンケート結果を用いて、うつや不安障害と診断されたことがあるか、また現在そういった症状があるかどうかについても解析しました。

 解析結果をみると、複雑な家庭環境にあった中高生は全体の49.3%でした。かなり割合が高いようにも思えますが、以前にアメリカで行われた他の大規模研究でも、同程度の割合です。さらに、複雑な家庭環境をもっていた中高生の中で、チームスポーツに参加していたグループとそうでないグループを比較すると、13~14年後までにうつと診断されたことがある割合はそれぞれ16.8%と22.0%、不安障害では11.8%と16.8%、現在のうつ症状では21.9%と27.5%でした。

次のページ
梅雨の時期は外遊びをさせるべき?