「2時間ドラマの裏女王」の名も。山村紅葉さん (c)朝日新聞社
「2時間ドラマの裏女王」の名も。山村紅葉さん (c)朝日新聞社
矢部万紀子(やべまきこ)1961年三重県生まれ、横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』
矢部万紀子(やべまきこ)1961年三重県生まれ、横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』

 曽野綾子さんの講演会に行ったことがある。

【この記事のその他の写真はこちら】

「私はエリザベス・テイラーと同級生です」

 曽野さんがそう言うと、会場がどっと沸いた。曽野さん、1931年9月生まれ。テイラーさん、1932年2月生まれ。

 その伝に習うなら、私は山村紅葉さんと同級生だ。山村さん、1960年10月生まれ。私、1961年1月生まれ。曽野さんは、テイラーさんにどれだけ親しさを感じているのだろう。私は山村さんが好きだ。がんばる同級生だから、好きなのだ。

 ここで簡単に「山村紅葉の基礎知識」をまとめると、ミステリー作家・山村美紗の長女で、早稲田大学政治経済学部在学中に母の原作ドラマで女優デビュー、1985年に卒業、国税庁国税専門官として勤務、大蔵省職員との結婚を機に87年退職、女優に復帰、現在に至る、となる。

 私たちの学年で85年に大学卒業というのは、「2浪」の計算になる。山村さんの事情は知らずに勝手に読み解くなら、山村さん、負けず嫌いの努力家だと思う。

 あの時代、「早稲田の政経」に2浪して入った人は、たいてい東大を狙っていた。「進学校」と呼ばれる県立高校に通うだけは通っていた私の周囲では、そうだった。ただし基本は男子で、女子の知り合いに2浪して東大を受けようという人はいなかった。山村さんは志高い人なんだ。そう思って、尊敬している。

 学生時代に女優として20本以上のドラマに出演したというのも「紅葉の基礎知識」の一つ。そのまま女優を続ける選択肢もあったはずだ。だがそうはせず、国税専門官の試験を受けた。そして受かって働いた。

 男女雇用機会均等法が施行される前に就職活動をした同級生として解説するなら、これはすごく勉強が好きで、得意で、一生働く意欲があって、手堅い発想をする女子学生のとる行動だ。そういう行動を取ること自体がすごい。

 だって母親は山村美紗なのだ。テレビ局、または広告代理店に楽勝で就職できたはずだ。なのに親と関係ない難しい試験に挑み、受かる。なんて真っ当な人なのだろうと、思う。

著者プロフィールを見る
矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

矢部万紀子の記事一覧はこちら
次のページ
主役ではないのに、ずっと出ている