ただ、柴崎が長友ほどキャッチーな物言いをしているとは言い難い。「それを求められても困る」と本人も言うかもしれない。むしろインパクトの大きな発言をするのは昌子の方だろう。「日本と欧州のサッカーの成長曲線は交わらない」「スライディングタックルでかわされると、日本では『ああ、あいつ軽い』って見られるけど、欧州では『相手うまい』って捉え方なんです」といった実感のこもった独特の言い回しはやはり聞く側の琴線に触れる。持って生まれた才能が大きいのかもしれないが、「人に自分のことを伝えたい」というサービス精神があれば、自然と表現方法もレベルアップしていくはずだ。そういう意味で、新リーダーの柴崎にも今後に期待を寄せたいものである。

 そして、東京五輪世代以下の若手を見ると、「何か言うとSNSに書かれて炎上するかもしれない」という恐怖が強いせいか、発言が地味な傾向にある。2019年コパアメリカ(ブラジル)参戦中の三好康児や冨安健洋らは非常に賢く、サッカーに関しての説明は長けているが、やはり人を引きつける表現ができるのは18歳の逸材・久保建英だ。

 20日のウルグアイ戦(ポルトアレグレ)を前に「ディエゴ・ゴディンとホセ・ヒメネスのアトレチコCBコンビをどう打開する?」との質問に対し、「名前でサッカーするわけじゃないんで」とアッサリ言ってのけたのには驚かされた。スペイン語圏のメディアも「クボの受け答えは一流選手のよう」と話していた人間もいた模様で、そのクレバーさは今後の日本代表のイメージアップと地位向上に生かされていくだろう。

 これまでは「あまり騒がないでほしい」と周囲の大人に特別扱いされてきた久保だが、A代表入りし、レアル移籍も決まったことで精神的に落ち着いたのか、メディアに対する接し方が変わりつつある印象を受ける。もちろん、サッカー選手はピッチ内での表現が何よりも重要だし、彼自身もそういう信念があるはずだが、サッカー人気をより高め、継続的に支持者を獲得するためにも、選手側からの発信はやはり不可欠だ。

 それをもっとポジティブに考える長友のような選手が続々と出てきてくれれば、日本代表も盛り上がる。そういう意味でも、長友という「コミュニケーションの鬼」の後継者になり得る若手の出現が待たれる。(文・元川悦子)