かつてはタブー? 芸人が「お笑い」を真剣に語りはじめたワケ (2/2) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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かつてはタブー? 芸人が「お笑い」を真剣に語りはじめたワケ

連載「道理で笑える ラリー遠田」

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ラリー遠田dot.#ラリー遠田
「アメトーーク!」の常連、出川哲朗 (c)朝日新聞社

「アメトーーク!」の常連、出川哲朗 (c)朝日新聞社


 寿司職人の寿司に対するこだわりを知っても知らなくても、客が味わう寿司そのもののおいしさは変わらない。むしろ、こだわりを知っている方がよりおいしく感じられることすらあるかもしれない。

 だが、「笑い」という料理に限ってはそれが通用しないことがある。受け手がリラックスしているときにしか笑いは起こらないものだ。芸人が裏で必死にがんばっているということが伝わってしまうと、観客としては気軽に笑いづらくなってしまう。

 本来、芸人が専門分野である笑いについて一般人よりも深く考えているのは当たり前のことだ。だが、彼らは深く考えていることをあえて知られないように振る舞う。本当は裏ではがんばっているのに、表向きはがんばっていないように見せることが、笑いという特殊な仕事においては正解となる。

「ゴッドタン」や「アメトーーク!」でそのような企画が実現できるのは、これらが長年お笑い好きに愛されている番組だからだ。視聴者との間に信頼関係があるからこそ、芸人が真面目に笑いを語るのを娯楽として提供することができるのだろう。

 ただ、今後はテレビでもそれ以外のメディアでもこの手の企画は増えていくのではないかと思う。なぜなら、それが多くの人に必要とされているからだ。

 一昔前までは、お笑いを楽しもうと思ったら地上波テレビを見るかライブに行くという選択肢しかなかった。だが、現在は違う。AbemaTV、Amazonプライム・ビデオ、YouTubeなど、地上波以外でもお笑い系の動画コンテンツは豊富にある。また、民放公式テレビポータル「TVer」などの見逃し配信サービスも充実しているため、話題になった地上波の番組をあとからチェックするのも容易になっている。

 面白いコンテンツは豊富にある。ただ、あまりにも数が多すぎるため、「どれを見ればいいか分からない」という状況に陥っている人が結構いるのではないかと思う。面白いものはたくさんありすぎることが原因で、それを探すための手間が増えているのだ。

 だから、プロの芸人や専門家が「これが面白いですよ」と教えてくれるサービスには需要がある。いわば、分厚い本にインデックス(索引)が必要であるように、このコンテンツ飽和時代にはインデックス型のサービスが必須になってくるのだ。

「アメトーーク!」の中でバラエティ番組のことを熱心に語っていた品川祐は「メルマガ始めるんで」と冗談めかして語っていたが、そのようなサービスは本当に必要とされている気がする。

 そういうインデックス型のサービスを通して、地上波のメジャーな番組だけではなく、面白い番組が次々に発掘され、多くの人がそれを楽しめる状況になれば、作り手にとっても受け手にとってもこれほどすばらしいことはない。面白いものを面白く紹介する能力がある品川のような芸人は、コンテンツ飽和時代のナビゲーター役になることができるはずだ。


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ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・ライター、お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)など著書多数。近著は『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)。http://owa-writer.com/

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