「マツ(松田直樹)さんが横浜F・マリノスを契約満了になった頃(2010年)は『30歳定年制』みたいに言われていたけど、今は35歳くらいまで年齢が上がりましたよね。それはいいことだけど、その35歳を過ぎてからコンスタントに活躍できる選手はほんの一握り。僕自身も昨年は出られない時期が長くて、どうすればいいか考えました。

 正直、20代の頃みたいにタテにガンガン仕掛けたり、前へ行ってCKを取ったりできるわけじゃない。衰えを感じる部分は正直、あります。若い頃と同じ姿を求めてもムリだから、どうやってチームに貢献できるかを考えなきゃいけないんです」と大久保と同じ36歳の右サイドバック・田中隼磨(松本山雅)は複雑な胸中をしみじみと打ち明ける。

 彼が言うように、「ベテランの価値をどう示すか」が選手寿命を延ばす重要ポイントになってくるのは1つの事実だろう。

 指揮を執る側にしてみれば、実績あるベテランの扱いというのは非常に難しい。若手なら理不尽な要求をしても黙って従うし、ガムシャラに食らいついてくるから扱いやすいが、ベテランには長年活躍してきたキャリアも成功体験もあるから、自らが示した戦い方や戦術、指示をすんなり受け入れてくれるとは限らない。「だったら若手を使った方がやりやすい」と考えるのも当然だ。

 その結果、ベテランは徐々に出番が減り、ベンチにいることが辛くなってくる。昨年限りで引退した小笠原満男も「自分がそういう立場に置かれるようになったらやめようと思っていた」と神妙な面持ちで話していたが、そういう判断になるのか、カテゴリーを下げても現役を続けるのかは選手の考え方次第。かつての松田直樹や川口能活、名古屋グランパスから当時J2にいた故郷の松本山雅へ赴いた田中、あるいは自分が10代の頃に育ったジェフユナイテッド千葉に今季から戻った佐藤寿人などは後者に該当する。

 ただ、そうやってキャリアを継続できたとしても、「ベテラン」という看板はどこに行ってもついて回る。そこで何らかの付加価値を発揮しなければ、戦力から外される結果になりかねないのだ。

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何で存在価値を示すか