芸能関係を見てみよう。60歳に手が届く年代になったせいか、俳優では大物感を抱かせる人たちがそろう。佐藤浩市、真田広之、生瀬勝久、西村まさ彦、村田雄浩、川野太郎、渡辺謙*、室井滋、紺野美沙子、山村紅葉、浅野ゆう子、田中美佐子*、古手川祐子*など。宝塚出身の涼風真世と黒木瞳、2時間ドラマの女王と帝王である片平なぎさ*、船越英一郎も、映画、ドラマには欠かせない。

 アイドルはこの年代にそれほど多くない。上の世代にはピンク・レディーや山口百恵などがいる。「花の82年組」といわれる小泉今日子中森明菜、堀ちえみ、早見優などは、1965~1967年生まれ。ちなみに天皇が「浩宮さま」時代にファンだった柏原芳恵は、1965年生まれだ。

 天皇世代最強のアイドルがいた。大場久美子である。デビュー当時のキャッチフレーズは「一億人の妹」である。平成後半、ネット画像の拡散で瞬く間に注目された橋本環奈の「1000年に一度のアイドル」と勝るとも劣らないほど、大場には熱狂的なファンが多かった。

 ほかに高田みづえ、倉田まり子、榊原郁恵*、林寛子*などが活躍し、女子大生タレントとして川島なお美が注目されていた。キャスターとして人気を博したのが久和ひとみ、山口美江である。川島、久和、山口の3人が若くして亡くなったのは惜しまれる。

 芸人ではものまね芸に磨きをかけ続ける清水ミチコ、コロッケがいる。

 ミュージシャンには氷室京介、大江千里、サンプラザ中野くん、麻倉未稀、杉山清貴*など。氷室は夭折の芸術家、山田かまちの同級生でもあった。テノール歌手の錦織健、オペラ歌手の森公美子*も天皇世代だ。

 スポーツ界では、イチロー、中田英寿に匹敵するような傑出したアスリートは見当たらない。プロ野球では「炎のストッパー」といわれた津田恒美(広島)のほか、小松辰雄*(中日)、川口和久*(広島、巨人)、松永浩美(阪急、阪神、ダイエー)、平田勝男*(阪神)など。監督経験者には西村徳文(ロッテ)がいる。

 サッカー界では、Jリーグ開幕時に天皇世代の選手たちが30代半ばで現役を引退していたなか、水沼貴史(横浜マリノス)が活躍していた。陸上競技のマラソン選手では、谷口浩美が「こけちゃいました」、中山竹通*が負傷した瀬古利彦に対し、試合に「這ってでも出てこい」と名セリフを残している。ボクシングでは赤井英和*、新体操では山崎浩子、女子プロレスではダンプ松本がいる。

 天皇と同世代の著名人をざっと眺めてみた。これまでは「皇太子と同年代なんだ」と意識していただろうし、これからは「そうか、天皇と同じ年なのか」と感慨深く思うこともあるだろう。まもなく還暦を迎える天皇世代には、まだまだ現役でがんばってもらいたい。(文/教育ジャーナリスト・小林哲夫、文中敬称略)