「ゴールデンならわかりますけど、深夜で1000万円の自腹購入はなかなかありませんよね。これは、『今後この番組をきっかけにもっとブレイクしてやる』というノブさんの自信と期待の表れとも言えます。実際、これをきっかけにスタッフとの一体感はすごく生まれたそうですよ。バラエティ業界でど真ん中をいく『アメトーーク!』チームを味方につけられるなら、安い買い物だったのかもしれません。千鳥は笑いになるならなんでもやるふたり。大悟さんは不倫スキャンダルを報道されても唯一といっていいほど炎上しなかった芸人。あの芸風であり風貌ですから、さすがにネット民も正論を振りかざしづらいんでしょうね。そういった意味でも、最強のお笑いコンビと言えます。CM出演も増えてますし、バラエティでも新規の単発オファーなどはほとんどスケジュールが取れない状況です」(前出のプロデューサー)

■かまいたちやダイアンにも思わぬ恩恵が

 一方、“空前の千鳥人気”は思わぬテレビ界に思わぬ副産物を生んでいる。そう語るのは、人気番組を数多く手掛ける某放送作家だ。

「キャスティング会議で千鳥の名前は必ず出ますが、僕らもその時点で『どうせスケジュールが取れないだろう』と思いながら会議を進めます。で、案の定取れないことがほとんど。その場合、数多くの芸人が所属するよしもとですから、必ずほかの芸人さんを逆提案される。今だとかまいたちとダイアンが多いのですが、彼らもまた大阪で相当な場数を踏み、『千鳥に追いつけ追い越せ』で東京に出てきた芸人。結果的に彼らのおかげで番組も相当盛り上がるので、彼らの次のオファーにもつながる。つまり、いま千鳥が大ブレイクしていることで、ポスト千鳥と言われているかまいたちとダイアンもブレイクしつつあるんです。ここまでの好循環は、今までなかなかなかったことですね」

 TVウオッチャーの中村裕一氏は、人気爆発中の千鳥の今後についてこう予測する。

「千鳥の場合、やはり漫才師としての実力が揺るぎないのが一番の強みだと思います。フジテレビの人気ネタ番組『ENGEIグランドスラム』にも全12回中7回も出演し、その安定感もはやベテランの域にさしかかっていると言っても過言ではありません。ボケとツッコミという漫才の基本がカラダに染み付いているからこそ、どんなバラエティ番組にも対応し、かつ埋もれることなく彼らの色を出せているのだと思います。一見コワモテに見える大悟が実は優しく、普通に見えるノブがキレやすいなど、コンビのキャラクターの意外性もばっちりです。唯一のウイークポイントと言えば“華かさ”がないことくらいですが、二人も自覚していると思うので、逆に華のなさを売りにして、これからも泥臭くコテコテの漫才師として息の長い活躍を続けてもらいたいです」

 とはいえ、全国ネットにおける千鳥の快進撃はまだ始まったばかり。果たしてノブのベンツ代ぐらいはお釣りがくるほど息の長い活躍ができるのか? 期待して見続けたい。(文/藤原三星)   

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藤原三星

藤原三星

ドラマ評論家・芸能ウェブライター。エンタメ業界に潜伏し、独自の人脈で半歩踏み込んだ芸能記事を書き続ける。『NEWSポストセブン』『Business Journal』などでも執筆中。

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