国立病院機構久里浜医療センター院長の樋口進医師(本人提供)
国立病院機構久里浜医療センター院長の樋口進医師(本人提供)
※写真はイメージです(写真/getty images)
※写真はイメージです(写真/getty images)

 アルコール依存からギャンブル依存、ネット依存、そして薬物依存……。さまざまな「依存」をよく見聞きするようになった。飲酒もパチンコもインターネットの利用も、それ自体はとくに問題にはならない。ではどこからが依存で、その境目はどこか。依存の何が問題なのか、などを、依存症治療の第一人者である国立病院機構久里浜医療センター院長の樋口進医師に取材した。

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 ある行為が「依存」かどうかを見極めるポイントの一つは、その人にとって、「気持ちよくなりたいとか、多幸感、わくわく感を得たいという気持ちが出発点になっているかどうか」です。

 「気持ちよくなりたい」ために“お酒漬け”になった場合はアルコール依存の恐れがあります。しかし、たとえば“野球漬け”のプロ野球選手が、野球を始めたきっかけが「気持ちよくなりたいから」とは考えにくく、野球依存とはいいません。

 もう一つのポイントは「結果として、本人をはじめ、家族などの周囲の人に問題が起きているかどうか」です。アルコールやギャンブルなどでは、本人や家族に、健康面や経済面などでの問題が現実に発生しており、明らかに依存といえます。前述の例なら、“野球漬け”が原因でこれらの問題が起こることも考えにくく、やはり野球依存とはならないでしょう。

 また、依存では共通して脳内の変化もみられます。私たちの人間らしい行動は脳の前頭前野という部位でコントロールされており、その働きから理性の脳ともいわれています。この変化はMRI(磁気共鳴断層撮影)検査でわかります。依存が進むと、どの依存でもこの脳の働きが落ちてきます。理性の脳の働きが落ちると自分のコントロールができず、依存がますます進むという悪循環を招くことも、すべての依存に共通しています。

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