アベノミクスが順調に見えたのは、世界経済の好調を背景に日本の輸出が増え、企業収益が大幅に改善していたからだ。その頼みの綱である外需が頭打ちになれば、アベノミクスはたちどころに変調を来す。しかも、将来有望な産業も企業も全く育っていない。

 一方、米朝交渉が段階的相互譲歩のシナリオで進めば、北朝鮮への経済支援が段階的に可能になる。

 ここから先は、昨年6月18日の当コラムでも紹介したが、北朝鮮のGDPは日本円で1.8兆円(2016年)ほどに過ぎないものの、国民の教育水準は低くなく、12万平方キロの国土に約2500万人の人口を抱えている。周辺に日本、韓国、中国東北地方、ロシア極東地域が広がり、米朝和解で地政学上のリスクがなくなった後は、この国は“北東アジアの新しい経済フロンティア”となり得る。現に、それを見越して、韓国では、大手企業がこぞって、一昨年あたりから、対北朝鮮投資に向けて本格的な準備を進めている。アメリカのGEなどが北朝鮮詣でをはじめたというニュースも報じられた。中国でも、北朝鮮国境地帯の丹東では、北朝鮮バブルで不動産価格が高騰し、経済も絶好調だ。ロシアも中国への投資拡大を狙って動いている。

 投資の神様と言われる米投資家のジム・ロジャーズ氏は、南北朝鮮が統合すれば、日本は太刀打ちできないという予想をつい最近出した。

■日本の最大リスクは安倍総理

 そんな北アジア情勢の中で完全に「蚊帳の外」状態の日本はどうすべきなのか。

 実は、02年の日朝平壌宣言で、日本は北朝鮮に経済協力を約束している。この考え方を推し進めて行けば、日本の出番があるかもしれない。
18年4月の南北首脳会談で署名された「板門店宣言」では、ソウルから平壌を経由して中朝国境に至る「京義線」の他に、ロシア国境から朝鮮半島東部沿岸を縦断する「東海線」について、鉄道と道路の高度化を目指すと書いてある。その東海線をシベリア鉄道、さらには日韓海底トンネルを建設して九州と連結すれば、日本から朝鮮半島・ロシアを経由してヨーロッパにつながる壮大なユーラシア横断鉄路が完成する。中国の一帯一路構想と並ぶプロジェクトになるかもしれない。新幹線を売り込むことも可能だ。

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安倍政権の戦略「1年遅かった」