北朝鮮の電力インフラの整備に乗り出し、そのついでにモンゴルで太陽光発電した電力を日本に送る巨大な送電網=アジアスーパーグリッドの建設構想推進の主役になってもいいだろう。日本のソフトバンクグループはこの構想に深くかかわっている。

 早い段階から北朝鮮と経済協力の構想を話し合うなかで相互間に信頼が生まれれば、決して容易ではないが、拉致問題の早期全面解決も視野に入るかもしれない。

 しかし、ここで最大のネックになるのが安倍総理だ。表面的には、金委員長との直接対話に乗り出すと言っているが、はっきり言って、1年遅かった。昨春以降、韓国に続きアメリカが融和路線に切り替えた時にすぐに路線転換すべきだったが、ひたすら北朝鮮に敵対するだけの姿勢を貫き、完全に道を間違えたのだ。

 安倍総理のせいで、北朝鮮は日本に対して並々ならぬ敵意を抱いている。それを帳消しにしてもらうのは大変だ。しかも、頼みのトランプ大統領は「対北経済協力資金は日韓が拠出する」と公言している。日本の国民は、安倍総理のおかげで、おそらく数千億円単位あるいはそれを超える負担をさせられることになるだろう。下手をすれば、資金供与だけを求められ、経済プロジェクトに関与できないということにもなりかねない。

 もう手遅れかもしれないが、 安倍総理は、脇役として、南北米三者の努力を側面からサポートすることに汗をかくべきだ。それ以外に汚名返上の道はないだろう。(文/古賀茂明

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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