理解できないパートナーの言動の裏にあるものとは?(写真:getty Images)
理解できないパートナーの言動の裏にあるものとは?(写真:getty Images)

 パートナーの家族といるとき、会話や行動に違和感を持ったことがある人は少なくないだろう。カップルカウンセラーの西澤寿樹さんが夫婦間で起きがちな問題を紐解く本連載、今回は「"普通"の違い」について解説する。

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 先日、ご夫婦で相談に来られた久美子さん(仮名、会社員、40代)は夫への不満をこんな言葉で表現していました。

「普通、人が泣いていたら、『どうしたの?』って聞くでしょう?」
「妻が熱を出して寝込んでいるのに、普通は同僚と飲みに行ったりしないでしょ」

 何度も「普通こうでしょ」というフレーズが登場します。

 夫の豊さん(仮名、会社員、40代)にも当然言い分がありました。泣いているときはそっとしておいたほうがいいだろうと思っていたとか、熱はピークを過ぎたし、レトルトのお粥も飲み物も用意してあるし、万一の時は携帯で連絡がつくのだから問題ないと思っていた、とかです。

 聞けば、久美子さんの育った家庭は、お互いが細やかに気にしあう家族で、誰かが泣いていたら当然「どうしたの?」と声をかけ、じっくり話を聞くし、誰かが体調を崩せば、多少無理をしてでも誰かが家にいて看病してくれるような家庭でした。

 一方、豊さんは、男3人兄弟。泣いている姿など見られればバカにされるので、泣きたいことがあっても我慢するか、せめて隠れて泣き、ほかの兄弟が泣いているのを見た記憶もないそうです。病気になると、忙しかった母親から「なんで熱出すのよ」「あんたのせいでパート休まなきゃいけないじゃない」「給料減らされて大損だわ」など小言を言われるのが嫌で、病気で寝ていても放っといてほしいと心底思っていたそうです。だから豊さんとしては、どちらかというと善意でやっているとすら言える行動なのです。

 そのお話を聞いているときに、ふと先日読んだある本のことを思い出しました。

『外国語学習の科学』という本には、子どもで母語の習得に失敗する人はほとんどいないのに、大人の外国語(第2言語)の習得はほとんどの場合失敗に終わる、という話があり、目からうろこが落ちました。

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西澤寿樹

西澤寿樹

西澤寿樹(にしざわ・としき)/1964年、長野県生まれ。臨床心理士、カウンセラー。女性と夫婦のためのカウンセリングルーム「@はあと・くりにっく」(東京・渋谷)で多くのカップルから相談を受ける。経営者、医療関係者、アーティスト等のクライアントを多く抱える。 慶應義塾大学経営管理研究科修士課程修了、青山学院大学大学院文学研究科心理学専攻博士後期課程単位取得退学。戦略コンサルティング会社、証券会社勤務を経て現職

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