言語の習得というのはとても大変なことですが、日本を訪れる外国人の方が、片言ででも「ありがとう」とか「こんにちは」と日本語を話してくれると、私は、嬉しかったり、ちょっと心を開きたい気分になったりします。相手の言語を理解し、話すというのは相手に対する敬意でもあります。

 日本語は日本の文化・歴史を背負っていますが、ある人が話すその人の言葉も、その人がどうやって生きてきたかという文化と歴史を背負っているのです。夫婦のコミュニケーションがどの程度うまくいくかというのは、結局のところ、パートナーが話す"特別な日本語"をどれだけ習得できているかがカギだと思います。言葉が通じない相手と、トラブルが起こってから話し始めてもなかなか道は遠いのです。

 愛情表現の言葉が思い浮かばない、という男性は少なくありません。

「愛してるよ」や「ご飯おいしかった」「ありがとう」ももちろんいいのですが、愛情表現として相手の"特別な日本語"を学んでみるというのが私のお勧めです。相手がよく使うフレーズや、自分には違和感のある言動が、どうやって習得されたのかな、ということに注目してみてください。(文/西澤寿樹)

※事例は事実をもとに再構成しています

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西澤寿樹

西澤寿樹

西澤寿樹(にしざわ・としき)/1964年、長野県生まれ。臨床心理士、カウンセラー。女性と夫婦のためのカウンセリングルーム「@はあと・くりにっく」(東京・渋谷)で多くのカップルから相談を受ける。経営者、医療関係者、アーティスト等のクライアントを多く抱える。 慶應義塾大学経営管理研究科修士課程修了、青山学院大学大学院文学研究科心理学専攻博士後期課程単位取得退学。戦略コンサルティング会社、証券会社勤務を経て現職

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