生後6カ月までの赤ちゃんは、インフルエンザワクチンを接種することができません。赤ちゃんを守るためにも、ママが接種しておくことは大切ですね。注意点としては、妊婦さんは普通の注射のインフルエンザワクチンしか接種できないということです。「フルミスト」という国内未承認の経鼻インフルエンザワクチンを取り扱っている医療機関もありますが、これは生ワクチンなので、妊娠中の方は接種できません。

■接種しておきたいもう一つのワクチン

 そして、実はもう1種類、妊娠中に接種したいワクチンがあります。「百日咳」のワクチンです。

 百日咳は、その名の通り咳が続く病気です。コンコンコンと咳が続き、その間呼吸ができなくてとても苦しくなります。生後6カ月未満の赤ちゃんがかかってしまうと、咳が続いてそのまま呼吸が止まってしまい、亡くなることもある病気です。

 百日咳の免疫は、赤ちゃんに四種混合ワクチンを接種することでついていきますが、四種混合の接種は生後3カ月からです。それまでの、特に重症化しやすい月齢の赤ちゃんを感染から守るには、ママがワクチンを打つ必要があります。

■百日咳予防に高い効果

 2015年に発表されたイギリスの研究では、生後8週までに百日咳にかかった赤ちゃん58人と、その比較対象となる赤ちゃん55人を調べました。すると、妊娠中にママが百日咳ワクチンを接種していた割合は、百日咳にかかった赤ちゃんで17%、かからなかった赤ちゃんで71%でした。この結果から、生後8週までの赤ちゃんの百日咳を予防するための、妊娠中のワクチン接種効果は、93%と計算されています。

 アメリカでは、妊娠27週~36週の間に、Tdapと呼ばれる成人用の3種混合ワクチン(百日咳、ジフテリア、破傷風)を接種することが推奨されています。子どもに免疫を渡すことが主な目的なので、妊娠のたびに接種が必要です。

 百日咳の単独ワクチンは製造されておらず、現在日本では成人用3種混合ワクチンが承認されています。これはTdapとは抗原量が異なり、添付文書上は「妊娠中の接種に関する安全性は確立されていない」と記載されています。Tdapは国内未承認ですが、個人輸入で取り扱っている医療機関もあります。接種希望の際は、医療機関でご相談いただくのが良いと思います。

 妊娠中のインフルエンザワクチンと百日咳のワクチン、ぜひ接種を検討してみてください。

◯森田麻里子(もりた・まりこ)
1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表

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