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 学童保育の現場まで知る保護者は決して多くない。保育士と教員と支援員の専門性が異なることまで知らなければ、問2では(1)を選んでしまうだろう。また、問3でも、文頭に「安全を確保するために3~4人を必ず置くこと」がきていれば、後半に続く「緊急時に大人が駆け付けられる場合は1人でも良い」に主眼が置かれなくなり、安易に(2)を選択してしまうことも考えられる。規制緩和を誘導する設問と回答の設定といえないか。

 まるで規制緩和ありきで急ピッチで議論は進み、2018年11月19日の地方分権改革推進会議では、片山さつき内閣府特命担当大臣(地方分権改革)出席のもと、「従うべき基準」から「参酌すべき基準」にするという「対応方針」が了承された。これは、政府が事実上、来年度からの職員配置や研修すべき基準を撤廃することを決めたことを意味する。

 この事態を受け、11月22日に内閣府で行われた「子ども・子育て会議」では職員配置の参酌化に対して次々と疑問の声が挙がった。

「なぜ参酌化しなければいけないのか。学校の授業と匹敵する時間、あるいはそれ以上の時間、親元を離れて過ごす。子どもの生命、人権、発達保障にかかわり、児童福祉と同じ位置づけとなる。子どもを見守る職員の配置基準は国が責任もって定めるべきだ」(柏女霊峰委員・淑徳大学総合福祉学部教授)

「なぜ職員の基準を緩和するということになったのか。従うべき基準は健全育成のための第一の目標。どのような職員がどのように必要か。日々、遊びと生活を支援する確かな専門性を有した職員が求められる。子どもたちがリラックスして安心、安全に過ごすためには複数必要だ」(中川一良委員・社会福祉法人健光園京都市北白川児童館館長)

「異年齢の複数の児童が放課後子どもクラブで過ごしている。私は小学校で教員をしていたが、子どもが安全に過ごすためにどれだけ人の手がかかるか身をもって経験してきた。基準は引き下げるべきではない。人手不足を規制緩和で解決するのではなく、賃金や雇用形態の改善、資格取得支援などによって人材確保すべきではないか」(山本和代委員・日本労働組合総連合会副事務局長)

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