昨年12月25日、政府は学童保育の職員の配置基準を規制緩和する閣議決定を行った。現在、学童保育には2人以上の職員が配置されていなければならないが、政府は職員が1人いれば運営できるようにする方針だ。これに対して、日本弁護士連合会は同日、反対する意見書を内閣総理大臣など関係大臣に提出した。学童保育は、共働き、ひとり親家庭には必要不可欠な存在だが、そこで働く指導員の労働条件は改善されないまま放置されている。
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「子どもと接する職業に就きたくて、たまたま知った学童保育の仕事。天職だと思って働いているが、このまま続けられるのか」
地方の学童保育で働く内田洋子さん(仮名、40歳)は、将来を考えると不安ばかりが募ってくる。保育士の処遇改善は進む一方、保育所を卒園してから預けられる「放課後子どもクラブ」(学童保育のこと)を支える学童指導員は劣悪な労働条件となっている。
短大を卒業後、洋子さんは塾で働いていたが営業ノルマがきつくサービス残業も多かったことから転身し、自治体が設置する学童保育で働き始めた。1年更新の非正規雇用で働いてきたが、15年もの間、非正規雇用のままだ。1年目の月給は額面で約15万円。いま、月給は18万円になったが手取りは15万円程度。実家から通勤するからこそ続けられる賃金水準だ。
学童に子どもがやってくると「お帰り!今日は何をして遊ぼうかな」と、年齢やその子に応じた遊びを考えるが、子ども同士の喧嘩の仲裁も大事な仕事のひとつ。毎日通う学童だから、わだかまりが残らないように話し合う。自分の気持ちを伝える、相手の気持ちを考えることも学びの一つ。ただの喧嘩か、いじめなのかという見極めも重要だ。場合によっては、学校や保護者と密に連携を図らなければ、不登校や、いじめ、最悪のケースは自殺にまで追い込まれてしまう。しかし、指導員がトイレに行くなど目を離した隙に、いじめが起きる。大人の目が行き届かない時を狙って問題行動を起こす子どもが一定数いる。