学童保育は、行政では放課後児童健全育成事業と呼ばれ、2015年の「子ども子育て新制度」が始まると、学童保育の名称は「放課後児童クラブ」とされた。学童保育で働くスタッフは学童指導員と呼ばれてきたが、新たに「放課後児童支援員」という資格が誕生した。

 もともと何の設置基準もなかったため学童保育の現場では同じスペースに50人も100人も詰め込まれ、スタッフが1人しかいないというケースもあった。だが、2014年にようやく「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準(平成26年厚生労働省令第63号)」が策定され、省令で学童の基礎的な単位(以下、「支援の単位」)が、「1つの支援の単位は、おおむね40人以下とする」と基準が定められた。ただ、児童の集団の規模は「参酌すべき基準」とされて、省令基準をふまえて市町村が条例で基準を決めることになっている。

 また、省令基準では職員の配置基準が「支援の単位ごとに2人以上」とされ、うち1人は有資格者であることや、研修を受講しているなど一定の要件を満たす「放課後児童支援員」とすることとなり、質の担保が図れられた。職員配置については「従うべき基準」とされたが、省令基準ができてからわずか4年、人手不足を理由に、職員配置の「従うべき基準」が「参酌すべき基準」に規制緩和されようとしているのだ。

 背景にあるのは地方分権改革推進室の存在だ。配置基準を満たせないという地方自治体の声を受けて2017年12月26日、職員配置の「従うべき基準」の見直しが「平成29年の地方からの提案等に関する対応方針」のなかで示され閣議決定された。

 2018年3~4月に厚生労働省と内閣府地方分権担推進事務局が共同で実施した自治体への「従うべき基準」に関する実態調査では、規制緩和ありきの設問が出されていた。

「Q1 義務化としている放課後児童支援員研修の受講が負担であるという意見につき、改善につながると考えるものは何か」

「Q2 現行の支援の単位当たり2名の配置を改め、1人配置を可とすればどのような要件が必要か」

 Q1もQ2も、回答選択肢に、「研修を受講すべき」「1人配置を認めない」というものはなかった。

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