上沼恵美子 (c)朝日新聞社
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とろサーモン (c)朝日新聞社
とろサーモン (c)朝日新聞社

 2018年もそろそろ終わりを迎えようとしている。お笑い界では、毎年のように一発ギャグやキャラクターを売りにして大ブレークする芸人が登場するものだが、今年はやや不作気味である。「ブルゾンちえみ」級の新星は現れなかった。

【「ダーク系芸人」だから暴言騒動が話題になってしまった?】

 唯一気を吐いていたのは、物陰から顔を出すネタで知られるひょっこりはんぐらいのもの。1月1日放送の『おもしろ荘SP』(日本テレビ系)出演をきっかけに1年を通して活躍していた彼ですら、例年に比べると小粒感がある。

 そんな中で、世間の注目を集めていたのは、人をギョッとさせるようなネタやキャラクターを持っている「ダーク系」の芸人である。その代表は野性爆弾のくっきーだ。グロテスクな衣装や小道具を用いた唯一無二の芸風を備えている彼は、今年に入ったあたりからテレビの仕事が急増して、一気にメジャーになった。

 また、『水曜日のダウンタウン』(TBS系)にたびたび出演している安田大サーカスのクロちゃんも、テレビに出るたびに世間を騒がせている芸人の1人である。「モンスターハウス」という新企画では、一回り以上も年の差のある若い美女たちとひとつ屋根の下でガチ恋愛を繰り広げた。スマホで自撮りするふりをして女性を盗撮する、さっきまで女性が座っていたクッションに顔を埋める、女性が使っていたコップをこっそり舐めるなど、変態的な行動を連発して視聴者の度肝を抜いた。

 12月26日放送の「モンスターハウス」最終回では、非道の限りを尽くして女心を弄んだクロちゃんを許せるかどうかを決める視聴者投票が行われた。「許せない」が圧倒的な多数を占めたため、罰としてクロちゃんはとしまえんに設置された檻に収監されることになった。

 また、相方の相次ぐ不祥事ですっかりやさぐれてしまったインパルスの板倉俊之、口を開けば皮肉めいた発言ばかりが出てくる「腐り芸人」のハライチの岩井勇気、自分を棚に上げた鋭い分析力を見せる平成ノブシコブシの徳井健太など、「陰」の要素を持つ芸人が近年では注目される傾向にある。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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あの騒動も「ダーク系芸人」だから話題に?