クロちゃん、上沼恵美子、とろサーモンの久保田ら「ダーク系芸人」が席巻した2018年 (2/2) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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クロちゃん、上沼恵美子、とろサーモンの久保田ら「ダーク系芸人」が席巻した2018年

連載「道理で笑える ラリー遠田」

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上沼恵美子 (c)朝日新聞社

上沼恵美子 (c)朝日新聞社

とろサーモン (c)朝日新聞社

とろサーモン (c)朝日新聞社

 また、今年の『M-1』終了後に暴言騒動があれだけ話題になったのも、暴言の当事者であるスーパーマラドーナの武智、とろサーモンの久保田かずのぶ、そして暴言を言われた相手である上沼恵美子が、いずれも劣らぬほどの「ダーク系芸人」だったから、ということがあると思う。

 これらのダーク系芸人の特徴は、賛否がはっきり分かれるキャラクターの持ち主であるということだ。好きな人は好きだが、苦手な人は苦手。くっきーのグロテスクなネタやクロちゃんの平気で嘘をつくゲスい性格は、生理的に受け付けないと敬遠する人も多い。ただ、好きな人にとってはその極端な部分こそが、まさに面白くて見逃せない要素となる。クロちゃんのキャラクターなどは特に「人間的には苦手だが不思議と目が離せない」という感想を漏らす人も多い。

 ダーク系芸人が注目される背景には、お笑い界でも基本的には「いい人」が求められている時代になった、ということがある。内村光良、サンドウィッチマン、博多華丸・大吉など、人柄の良さで知られる芸人が好感度ランキングでも上位を占めていて、仕事を着実に増やしている。そんな時代だからこそ、反動としてダークな魅力を持った芸人を求める人も徐々に増えているのではないか。

 かつては、テレビで人気を博す芸人にはいいところも悪いところもあり、総合的に見て人間的な深みがある、というのが通例だった。だが、最近はそうではない。それぞれがもともとの個性を生かすようになっていて、いい人ならばいい人、ダーク系ならばダーク系というふうに、明確な売りを持ってそれを押し出す芸人の方が評価されやすくなってきている。

 くっきーが作り出す不気味な絵画や小道具も、見方を変えれば「アート作品」に見えてくる。また、クロちゃんの批判を恐れない自己中心的な態度も、角度を変えれば何でもプラスに考えるポジティブ思考である、と言えなくもない。

 世間では疎ましく思われるようなことであっても、芸人はそれを武器にすることができる。テレビが全体的におとなしく無難になっていく中で、ダーク系芸人の需要はこれからも高まっていくだろう。(ラリー遠田)


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ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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