中日・根尾昂 (c)朝日新聞社
中日・根尾昂 (c)朝日新聞社

 プロ野球ではドラフト指名された新入団選手の発表が行われる時期であるが、その中でも一番の注目を集めているのはやはり根尾昂(大阪桐蔭→中日1位)になるだろう。12月8日に行われた新入団発表の会見場は昨年の1.5倍の広さとなり、約200人もの報道陣がつめかけた。中日の公式ファンクラブ会員の申し込みもドラフト会議後に急増し、その経済効果の大きさでも存在感を示している。

 しかし、毎年のように注目のルーキーが入団するものの、期待通りの活躍を見せる選手はごく一握りである。そこで今回は根尾がプロで活躍するために乗り越えるべき“壁”について考えてみたいと思う。

 アマチュア野球とプロ野球の最大の違いはその試合数の多さである。近年強豪校では年間100試合以上の練習試合を組んでいるようなチームもあるが、公式戦と練習試合では緊迫感が異なっており、体に残る疲労も大きく違うはずだ。特に、高校野球の場合は基本的にトーナメントの短期決戦で大会が行われており、2週間以上公式戦が続くことはほとんどない。そのため、まずはプロ野球の長いシーズンに耐えられるだけの体力を身につけるところが必要になる。

 最初のポイントはシーズン前の春季キャンプになるだろう。新人選手の場合は1月から合同自主トレが始まり、2月にキャンプインし、下旬からは実戦に入っていく。長年プロ野球の世界でプレーしている選手はその流れが体にも染みついているが、ルーキーの場合はそれが分からないため、どうしてもオーバーワークになることが多いのだ。1年目から活躍できるような選手は、一度調子を落としてもそこから状態を上げられる選手だという。根尾は上級生になってからは大きな故障はなかったものの、1年生の冬には左脚太ももを肉離れしたこともあった。そのように慣れない時期に再び故障しないことが重要だろう。

 次に不安材料となるのが、その高い注目度だ。いきなり背番号7を与えられたように球団からの期待は極めて大きく、合同自主トレからその一挙手一投足を追うべく多くの報道陣、ファンが詰めかけることが予想される。球団ワーストの6年連続Bクラスに沈むチームにとっても“希望の星”と言える存在だけに、早くから取材も多くなるだろう。

著者プロフィールを見る
西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

西尾典文の記事一覧はこちら
次のページ
最も大きな壁となるのは…