セックスレスの理由は、ある調査によると、男性側は「相手が乗り気でない」、女性側は「その気にならない」がトップで、その次に「忙しい」、「家族になりすぎた」、「愛情がなくなった」などが続いています。しかし、私には「我慢のしわ寄せ」の結果のように思えます。

(心理学では「認知的不協和の理論」として知られていますが、人は自分自身が納得できる説明を必要とするので、実際のメカニズムを本人が適切に言い当ててないことも多いのです)

 もちろん、我慢が不要だというわけではありません。高校時代好きなだけ遊んだうえで、難関大学の入試に合格するのは、ほとんどの人には無理でしょうし、練習がつらいからと練習しないで、コンテストに入賞するのも難しいでしょう。栄冠を勝ち取る人々は(1)適切な方法で、(2)必要な量の努力をした人です。

 同じように、自分とは違う世界観を持った相手との生活を維持するためには、適切な方法で、相応の努力や忍耐が必要なのは間違いありません。国際結婚を考えてみるといいと思います。相手の言語を理解するだけでも大変で、文化の違いもあります。違う国の人だから、と目に見えてわかると、自分と相手は違う人だと実感しやすいのですが、同じ日本で育ち、同じ言葉が通じると、人は、相手も自分と同じだと錯覚してしまいがちです。

 前出の忠則さん夫婦は、妻の順子さんが、一方的に我慢させられていると感じているうえに、忠則さんの言動は「順子さんが我慢すべきだ」と言われている気がする、ということがわかりました。そこで、忠則さんのことに怒りや不満を感じたら順子さんはどうしたらいいのか、を話し合いました。

 すったもんだの末、行きついた結論は、順子さんが怒りや不満を感じたら、まず

「話を聞いてくれる?」

と忠則さんに確認する。

OKなら、順子さんは何が嫌なのか、何を怒っているのか伝える。

忠則さんは、それを自分が批判されたとは受け取らずに、順子さんが今こういうことが辛いんだ、というスタンスで聞き、「解決策」をアドバイスせずに、

「そっか、〇〇なんだ」

と答える、ということでした。

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実践して妻が気付いた意外なこと