その状況を改善したのが原口だった。

 後半23分に中島と交代でピッチに立つと、自慢の走力と対人の強さを生かし、左サイドの守備を安定させた。ロサレスがボールを持てば、素早く、厳しく寄せて自由にプレーさせず、自分の背後にボールが運ばれてもすぐに帰陣。前半、日本の陣地でフリーでボールを持つシーンが何度かあったロサレスは、原口の登場以降は沈黙した。

「ベネズエラは工夫して攻めてくるわけではなかったし、守りやすいといえば、守りやすかった。僕はサイドバックにやられないことだけを考えて、サイドハーフにうまく入ってしまったら僕もフォローに入ろうと思っていたし、サイドからはやられないだろうと思っていた」

 原口にしてみれば、守備への貢献はスタンダードという意識であり、自身の特徴を普段どおりに表現すれば問題は起きないという認識だった。ただ、守備の負担が明らかに軽減された佐々木は「本当に素晴らしいポジショニングでプレーしてくれたし、後ろにいる身としては助かった」と貢献度の高さを実感していた。

 もっとも、原口の貢献は守備だけにとどまらない。攻撃面でも自身の存在をアピールできていた。サイドでボールを受け、縦に仕掛けることでベネズエラの守備を揺さぶった。

「外から仕掛けたかった。外から中に入って行きたかった。そっちの方が良さが出るのはあるし、相手もある程度、疲れてきていて、自分についてこれないというのは分かっていたので、そういうシンプルな勝負でも勝算があるなと思ったので開いていた」

 後半29分、サイドバックのロサレスにプレッシャーをかけてアバウトなボールを蹴らせ、味方のはね返したボールが自分のところに飛んでくると、胸トラップからの鋭いターンでロサレスをかわし、その勢いのままサイドを突破してクロス。それは守から攻の素早い切り替えで状況を変えられる原口らしい連続性のあるプレーだった。

 その直後の場面でも、球際の攻防でボールをキープしてから左サイドで縦に仕掛け、さらにペナルティエリア内に切り込み、最後はダブルタッチでDFをかわしてGKの至近距離からシュートを放った。惜しくもゴールとはならなかったが、原口は狙い通りの仕掛けで立て続けにチャンスを作ってみせた。

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原口の存在は森保監督にとって収穫