「ひとはなぜ生きるのか」と考えたことがない 難治がんの記者と寅さんが語った「人が死ぬ理由」 (1/3) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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「ひとはなぜ生きるのか」と考えたことがない 難治がんの記者と寅さんが語った「人が死ぬ理由」

連載「書かずに死ねるか――「難治がん」と闘う記者」

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野上祐(のがみ・ゆう)/1972年生まれ。96年に朝日新聞に入り、仙台支局、沼津支局、名古屋社会部を経て政治部に。福島総局で次長(デスク)として働いていた2016年1月、がんの疑いを指摘され、翌月手術。現在は闘病中

野上祐(のがみ・ゆう)/1972年生まれ。96年に朝日新聞に入り、仙台支局、沼津支局、名古屋社会部を経て政治部に。福島総局で次長(デスク)として働いていた2016年1月、がんの疑いを指摘され、翌月手術。現在は闘病中

フーテンの寅像と筆者。2016年11月13日、東京・柴又の柴又駅前

フーテンの寅像と筆者。2016年11月13日、東京・柴又の柴又駅前

 うまくいかなかった2度の手術。「もう完全に治ることはない」と医師は言った。「1年後の生存率1割」を覚悟して始まったがん患者の暮らしは3年目。46歳の今、思うことは……。2016年にがんの疑いを指摘された朝日新聞の野上祐記者の連載「書かずに死ねるか」。今回は「ひとはなぜ生きるのか」という問いについて。

【フーテンの寅さんと一緒に…?】

*  *  *
 人はなぜ生きるのか。あるがん患者の女性が思い悩み、私がどう考えているか知りたがっている、と聞いた。

 それで我が身を顧みたものの、「人はなぜ生きるのか」も「なぜ死ぬのか」も、ぱっと答えが思い当たらない。

 難しい病気にかかれば、誰でも一度は思い悩みそうなものだ。なのに私が気にかけずにきたのは、ほかに考えることが多かったからだろう。たとえば、がんを根治するためにリスク覚悟で改めて手術を受けるかどうか。あるいは、毎週締め切りがくるコラムに何を書くのか。程度はバラバラでも、具体的な答えを出さなければいけない時に、抽象的な疑問が頭に入り込む余地はないのだ。

 とはいえ、だからあなたの疑問には答えられません、では、身もふたもない。頼りにされた以上は、誰かからの借り物でも、自分で納得できる言葉でご本人に役立ちたい。

 まずパッと頭に浮かんだのは、山田洋次監督の名物シリーズ「男はつらいよ」に出てくる寅さん、車寅次郎のセリフだ。

 第18作「寅次郎純情詩集」で寅さんがほれる近所のお嬢さんは病気で、余命いくばくもない。何も知らない寅さんは彼女が漏らした「人はなぜ死ぬのでしょうねえ」との問いに、答える。

 人間がいつまでも生きていると、陸の上が人間ばかりになる。押しくらマンジュウしているうちに、隅っこに居るやつが海の中へ落っこってアップ、アップして死んじゃう。そういうことになってるんじゃないですか、昔から――。

 寅さんはこの2倍近く冗舌に語り、「そういうことは深く考えないほうがいいですよ」とお嬢さんを諭す。


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