小田嶋:すごく説得されるみたいですね。「Whataboutism」っていうらしいけど、日本語に訳すと、「そっちこそどうなんだ主義」。それを言うなら、こっちはどうなんだ、って。

 もともとは、共産圏の人間が、自由主義諸国から自分たちの人権問題を突っ込まれたときに、「我々の人権問題よりも、お前らがキューバに対してやっているあれはどうなんだ」ってやり返すことで、とりあえず問題を相対化するために喧伝された方法だったのだそうで、もともとはクレムリンが……。

武田:安倍首相の答弁も、おおよそ、この方法によって構築されていますね。

小田嶋:安倍さんは、ものの見事にクレムリンです(笑)。

武田:2016年のことですが、高まる子供の貧困率について野党が尋ねると、首相は真っ先に「民主党政権時代の数値であって、安倍政権ができてからは調査されていない」と言う。どう改善していくつもりか、その議論を進めようとしているのに。

小田嶋:この間の、ゴルフのあれ(9月17日、TBS「NEWS23」番組内での「ゴルフがダメでですね、テニスはいいのか、将棋はいいのか、ということなんだろうと思いますよ?」という発言)だって。

武田:すごい発言でしたね。加計理事長との関係を問うているのに、ゴルフの価値についての話に……。

小田嶋:あれ、普通の人はびっくりするけど、コアな支持層は「そのとおりだ」と思っているわけだから。

武田:機能してしまうんですよね。「よくぞ言った。◯◯人に乗っ取られているTBS側も慌てふためいていたぞ!」なんて反応になるんでしょうか。

■ナンシー関は“芸能批評機関”だった

武田:先日、小田嶋さんが書かれていた日経BPのコラム(「新潮45」はなぜ炎上への道を爆走したのか)も、ちょうど小川氏の話題でしたが、雑誌の「雑」をどう考えるかという議題について書かれていましたね。

「新潮45」のあの特集についても、色々な意見が集まっているのが雑誌なんだからOKじゃん、との把握で終わらせている人がいる。雑誌の「雑」をどうして認めないんだ、との主張も見かけます。今はどの雑誌も、雑誌の「雑」の部分が……えっと、わかりますか、今、なんとかして、ナンシー関に持っていこうとしているんですけど(笑)。

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雑誌の「雑」をどこまで認めるか…