『ポツンと一軒家』に出演中の林修さん (c)朝日新聞社
『ポツンと一軒家』に出演中の林修さん (c)朝日新聞社

 バラエティ番組では「企画力」が重要だ。企画さえ良ければ、有名なタレントが出ていなくても、予算が少なくても、面白い番組を作ることは不可能ではない。企画力だけで大ヒットした番組として記憶に新しいのは、2017年に特番として放送され、2018年4月からはレギュラー化された『池の水ぜんぶ抜く大作戦』(テレビ東京系)である。公園などの池の水をくみ出して、そこに潜む生物を探して外来種を駆除する様子が話題になった。企画さえ良ければ、バラエティ番組は思わぬ大ヒットをすることがある。

 そんな企画先行型の番組としていま注目されているのが『ポツンと一軒家』(ABC・テレビ朝日系)である。MCは所ジョージ、パネラーは林修で、山奥などの人里離れた場所に存在する一軒家を取材して、その住人の素顔に迫る番組だ。もともと『人生で大事なことは○○から学んだ』(ABC・テレビ朝日系)という番組の中の一企画だった。それが好評を博したため、番組終了後にこの企画だけの特番を放送したところ、8回の特番の大半で12~13%台の高視聴率を獲得。この10月からレギュラー番組として放送されることになった。一軒家を訪ねて、一般人がどんな生活を送っているのかを紹介するだけのシンプルな番組が、なぜこれほど支持を集めているのだろうか。

 この番組の大きな特徴は、ロケのVTRが二部構成になっているということだ。目的地の一軒家の情報を集めて、そこにたどり着くまでが前半パート、一軒家の住人に話を聞くのが後半パートである。前半で謎を提示して「どんな人が住んでいるんだろう」という視聴者の興味をそそる。そして、後半で実際にその人の家を訪ねて、謎を解き明かす。ここにミステリーとしての面白さがある。

 それだけではない。VTRの前半と後半は全く違う種類の番組として楽しむことができる、というのもポイントだ。前半では、謎の一軒家を紹介して、その周辺情報を集めて紹介するということが徹底されている。最初にスタジオで一軒家を真上から捉えたグーグルアースの衛星写真が提示される。その場にいるタレントたちは、その写真だけを見て、どんな人が住んでいるのか、どんな目的でその家が建てられたのか、あれこれ想像をめぐらせる。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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