2つ目は、プロの世界で厳しい競争にさらされてきた苦労人でもあるということ。一茂はプロ野球選手になり、史上最高の天才プレーヤーだった父の才能を受け継ぐ者として日本中の期待を一身に集めてきた。良純は役者やタレントとして仕事を続けながら、難関と言われる気象予報士の資格を取得して、さらに仕事の幅を広げた。高嶋はヴァイオリニストとして年間100回以上のライブやイベントに出演している。厳しい世界を知っているプロ中のプロであるからこそ、そんな彼らのどこか抜けている部分が妙に人間臭く見えて、愛される要因になっている。

 3つ目は、それぞれバラエティタレントとしてのキャリアが長く、テレビにも慣れているということだ。彼らは昨日今日出てきた駆け出しのタレントではない。テレビでどういうキャラクターが求められるのかということもよく分かっている。だから、今さら脚光を浴びたところで浮足立つこともないし、ボロが出ることもない。この3人は坂上や梅沢にも劣らない本音トークを得意としているが、坂上や梅沢に比べると攻撃的なところがなく、マイペースで落ち着いた印象を与える。そういうところも魅力的である。

 ただ、それぞれ主張が強いこの3人が並び立つ様子はなかなかスリリングだ。『ザワつく!一茂良純時々ちさ子の会』はその意味で刺激的な番組である。3人が好き勝手に持論を述べたり、口論になったりしてすぐに収拾がつかなくなる。そこを何とかまとめて番組を進行させていく役割を与えられているのがサバンナの高橋茂雄である。高橋ぐらいの手練でなければこの場をまとめることはできないだろう。3匹の猛獣の共演はそれだけで強烈なインパクトがある。次の「坂上・梅沢」になるのはこの3人のうちの誰かではないだろうか。(ラリー遠田)

著者プロフィールを見る
ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

ラリー遠田の記事一覧はこちら