●なぜ外務省は英語版掲載を遅らせたのか なぜ掲載時点を答えないのか

 さて、話はここでは終わらない。どうして、外務省は正文である英語版をホームページに掲載しないのか、非常に不審に思って、5日午後に外務省に問い合わせたところ、まず北米1課に回され、しばらく待たされた後、その話は北米2課に聞いてくれということで、北米2課に回された。数分待たされた後の回答は、共同声明英文について、「今は掲載されています」という回答だった。たった今掲載されたのか、と不審に思い、いつ掲載されたのかを質問すると、「つい最近」のことだと答えた。正確にいつなのかを教えて欲しいというと、電話には入れ替わり3人(と思われる)の課員が出たが、わからないとのことで、その理由は、掲載を「依頼」しても実際の作業をするのは別の担当部署だからということだった。そこで、いつ掲載を「依頼」したのかを聞くと、これについても答えられないとし、さらに、名前を尋ねると、全員が答えられないという回答だった。なぜ答えないのかと聞くと、そのうちの一人は、個人情報だからと答えた。いかにも不自然な回答だ。よほど後ろめたいことあるのかなという邪推を呼ぶ。

 担当課からの依頼を受けてこれをホームページにアップする役割のIT広報室にも問い合わせたが、こちらは、いつ掲載したかについては、「その点については答えられない」の一点張りだった。ただし、この室員は名前を名乗った。おそらく、依頼を受けた後すぐに掲載したので、後ろめたいことがないからだろう。

 逆に言えば、掲載を遅れさせたのは、担当課の北米2課または北米1課の判断によるものだと推測される。

 ちなみに、共同声明の英文だけが正文であることは、北米2課も認めた。ただ、最初は、日本語文は正式なものだと言って私を丸め込もうとした後で、正文ではないはずだと言うと、それはそのとおりだと認めるという経緯だった。いずれにしても、日本政府も、英文だけが正文であるということを認めたのだ。私にとっては、これは非常に重要なことだった。なぜなら、米国大使館のホームページの記載を鵜呑みにすると、間違う可能性があるからだ。両国政府がともに認めたものでなければ、決定打にはならない。

 ちなみに、これだけの問い合わせのやりとりでかかった時間は約40分。英語版がいつアップされたかということは結局わからないままだった。官僚経験30年超の私から見ると、のらりくらり、質問に答えずに逃げようという外務省の姿勢は、何か後ろめたいことがあるに違いないと思わせるに十分なものだった。

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どうしても「FTA」を認めたくない安倍総理の事情を忖度する外務省