前評判は高かったオリックスだが開幕ダッシュに失敗。交流戦で浮上したものの夏場からは再び失速し、4年連続のBクラスに終わった。大きな誤算だったのは先発投手陣。エースの金子千尋が開幕から4連敗を喫するなどわずか4勝に終わり、2年目の山岡泰輔も大きく負け越した。西勇輝、ディクソンも貯金を作ることができず、上積みがあったのは新外国人のアルバースだけである。打線は吉田正尚が4番に定着して打率3割、20本塁打をクリアしたのは大きかったが、中軸として期待されていたロメロとマレーロの二人が成績を大きく落としてクリーンアップを固定することができなかった。もはやチームの伝統とも言える日替わり打線だが、もう少し主力を固定することができないと上位進出は難しいだろう。救いはリリーフ陣が安定していたこと。FAで獲得した増井浩俊は30セーブをクリアし、2年目の山本由伸はセットアッパーとして見事な活躍を見せた。同じく2年目の澤田圭佑も成長を見せ、比嘉幹貴が復活したのもプラス材料だ。打線も前述したとおり吉田正尚の存在は大きい。ただ、年齢的に金子にこれ以上を望むのは難しくなっており、西もFAで流出する可能性があることを考えると、先発投手陣の再編が大きな課題となりそうだ。

 昨年の5位から浮上して2年ぶりのAクラス入りを果たした日本ハム。昨年オフには大谷翔平(エンゼルス)がメジャーに移籍するなど、看板選手の流出が続いても過去5年で4度のAクラスと安定した成績を残しているのはさすがだ。ただし、直近の戦力を見ると、やはり優勝を狙うには物足りない部分が多い。一つは絶対的なエースと呼べる存在だ。今年は上沢直之が初の二桁勝利をマークして大きな成長を見せたが、まだエースと呼ぶには心もとない。有原航平も勝ち越してはいるものの防御率は4点台と安定感を欠いている。今後が楽しみな若手は少なくないが、全体的に少しスケール不足という感は否めない。野手は西川遥輝、近藤健介、中田翔の中堅が安定しているのが強みだが、捕手と二遊間をしっかり固定することができていない。ここ数年打線を引っ張ってきたレアードの去就が不透明なのも不安材料だ。チームの予算上限が厳しく決められているため、外から大物選手を獲得することは考えられず、今後も主力選手の流出は逃れられない宿命だ。そんな中で優勝を狙うには、今まで通り若手の積極的な抜擢以外に方法はないだろう。清宮幸太郎をしっかり大看板に育てあげ、投手でも次代を担うエース候補が出てくることに期待したい。

 最後は優勝候補の筆頭だったソフトバンクだ。シーズン終盤に意地を見せて食らいついたが、実は問題点は少なくない。まず気になるのが内川聖一と松田宣浩の後釜問題だ。5月に2000本安打を達成した内川は故障が続き、2年続けての規定打席不足となった。打撃技術の高さは健在だが、年齢を考えると往年の成績は期待しづらい。松田も4年連続となる20本塁打はクリアしたものの、シーズン序盤は不振に陥り打率は2割5分を下回った。存在が偉大だっただけに、その穴埋めは簡単ではないだろう。もう一つ大きな問題が若手投手陣の伸び悩みだ。石川柊太、千賀滉大の育成出身の二人の活躍は立派だが、上位指名した投手は軒並み戦力となっていない。昨年最多勝を獲得した東浜巨も今年は大きく成績を落とした。勤続疲労によって故障離脱するリリーフ投手が目立ったことも気がかりだ。投手も野手も層の厚さがあるだけに大きく低迷することは考えづらいが、黄金時代を築くためには不足している部分は少なくないだろう。

 こうして見てみるとセ・リーグの優勝を逃した5球団に比べると明るい材料は少なくない。また、西武も防御率はリーグ最下位と圧倒的な強さがあるわけではない。それを考えると来年以降も混戦が続くことが予想される。来年以降、どのような勢力図になるのか。このオフの補強次第で来季は順位が大きく入れ替わることも十分に考えられるだろう。

●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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