3. 女子の地元志向


 女子比率が高い上位10校のうち佐賀大44.7%、島根大41.2%、愛媛大と金沢医科大40.8%、秋田大40.0%、鳥取大39.3%と半分以上は地方大学である。

 島根大医学部医学科の合格者出身高校は、(1)出雲10人、(2)益田5人、松江北5人、(4)浜田3人、岡山白陵3人。岡山白陵を除く4校はすべて島根県内の高校だ。親元から離れず自宅から通える医学部に進みたい女子が集まった―――。

4. 入試科目で理科教科の有無
 国立大学の医学部医学科前期試験ではセンター試験5教科7科目、個別学力試験が課される。個別学力試験では理科教科を必修とするところ、必修としないところがある。それぞれの女子学生比率を見てみよう。

理科必修:北海道大23.1%、札幌医科大30.8%、山形大38.3%、東北大16.3%
理科なし:旭川医科大35.5%、弘前大37.8%、秋田大40.0%
 
 たとえば、北海道の女子受験生は理科必修の北海道大や札幌医科大ではなく、理科を課さない旭川医科大や弘前大、秋田大をめざした。このことから、個別学力試験に理科を課さない医学部に女子が集まっている――。

5. 女子入学者数を抑制
 東京医科大に限らず、女子入学者数を抑制した大学がいくつかある。筆記試験では点数調整はむずかしいので、面接試験で低い評価を与えた。したがって、女子は少ない――。

 1~4のいずれももっともらしいのだが、女子比率の低さを裏づけるエビデンスにはなりえない。

 女子は難関校をめざさない、研究医よりも臨床医を望む、地元志向が強い、理科が弱い、という調査結果が出たとしても、それを「女子だから……」などと、性による違いから特性を決めつけることはできないからだ。「女子は理科が苦手」などとだれも証明できない。男女の脳の違いからくる――という話になれば、トンデモの世界になってしまう。

5は医学部入試関係者には長いあいだ伝えられた話だが、噂話の域を出ない分、まともにとりあげることはできない。少しでも不自然なところがあれば、大学は徹底調査してほしい。

 大学によって医学部医学科の女子比率に偏りが見られるのは、その大学の歴史、役割、特徴、校風、地域性などに起因するとしか言いようがない。長いあいだ、女子比率が2割以下の状態が続くと、「この大学ではこういうものなのだろう」と、伝統みたいなものができてしまう。それに甘んじて、優秀な女子から選ばれない大学でいいのか。女子を積極的に受け入れる努力をすべきだろう。

 同じ医学部医学科なのに大学や地域によって4割以上、2割以下と比率に差が生じるのは健全なことではない。たとえば、九州でしかも隣県なのに佐賀大44.7%と九州大14.9%はおかしい。ちなみに佐賀大は個別学力試験で理科必修である。

 大学は医学部医学科の女子比率が低いことにもっと危機意識をもったほうがいい。女子が東京大、京都大の医学部に進んでノーベル賞を取る、そんな気運があってもいいではないか。

<東京大理III、京都大医学部医学科、島根大医学部医学科合格者のデータは2018年。大学通信、「週刊朝日」「サンデー毎日」合同調査から>

(文/小林哲夫教育ジャーナリスト)